法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 自転車と歩行者の交通事故が、歩道か車道かの違いで、過失割合は変わるの?

このエントリーをはてなブックマークに追加

自転車と歩行者の交通事故が、歩道か車道かの違いで、過失割合は変わるの?

日常生活に欠かすことのできない移動手段、自転車。
自転車は運転免許を必要としないため、幼児から老人まで、男女問わず幅広い世代で利用されているが、当然のことながら利用する機会が多ければ多いほど、交通事故の確率も比例して高くなる。
そして、ここで是非注意して欲しいのが、「自動車じゃあるまいし、自転車の交通事故は大したことにならないだろう」と高を括ることだ。

兵庫県が今年の10月から自転車利用者に対して、自転車損害賠償保険等の加入を義務付ける条例を施行したのは有名な話だ。しかし、そのキッカケとなった、ある交通事故をご存知だろうか。それは、当時10歳の少年が乗った自転車と歩行者が衝突した交通事故である。この損害賠償訴訟において、神戸地裁は平成25年7月4日、少年の母に約1億という高額の賠償を命じたのだ。

そこで今回は自転車と歩行者による交通事故が、歩道か車道かの違いで過失割合に違いが出るかどうかを加塚裕師弁護士に話を伺った。

歩道か車道かで過失割合に影響あり!

「自転車は、道路交通法上の『軽車両』であるとされており、車両としての通行規則に従う必要があります」(加塚裕師弁護士)

「具体的には、歩道と車道の区別があるところでは、一定の例外を除き、車道を通行するのが原則です(なお、車道の左側を通行しなければなりません)」(加塚裕師弁護士)

「このように車両としての通行規則に従う必要があるため、自転車が人をひいて怪我をさせた場合にも、それが歩道を走行中の場合には責任の度合いが重くなる可能性があります」(加塚裕師弁護士)

自転車が法律上は車両であること。また例外を除き車道を通行することが原則であること。この二つ、実は意外に知られていないのではないだろうか。つまり車道を走るべきにも関わらず、歩道を走って事故を起こせば、それ自体で不利になるということだ。

自転車は車両。車両としてのルールを守られなければ

そもそも過失割合とはどのように決めているのだろうか。

「交通事故の事件数は多く、また事故態様も類似が多いことから、過去の事例に基づいて過失割合が類型化されています。この点、実務において参照されているのが、別冊判例タイムズ38号という書籍に掲載されている過失相殺率の認定基準です。基本的にはこれを参照して過失割合を判断することになります」(加塚裕師弁護士)

では自転車と歩行者の過失割合の影響についても掲載されているのだろうか。

「判例タイムズ38号には、歩行者と自転車との事故についての過失相殺割合も掲載されておりますが、そこでは自転車の走行区分につき道路交通法違反がある場合には、自転車側の著しい過失として考慮することが考えられる旨の記載もあります」(加塚裕師弁護士)

やはり自転車は、車両であるため、その車両としてのルールを守らなければ自転車側の責任が重くなるということだ。

民事上の責任だけじゃなく、刑事責任も問われることをお忘れなく

民事責任としての損害賠償額は、基本的に被害者の怪我や損害の程度に左右される。この点から、自転車の交通事故が大したことにならないだろうと思われているのは、自転車が軽量かつ、低速であることが一番の理由だろう。

しかし自転車事故の高額となった損害賠償のケースをご覧頂きたい(参照:日本損害保険協会ホームページ)

賠償額:9266万円(平成20年6月5日 東京地裁判決)
事故概要:男子高校生が昼間、車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員と衝突。男性会社員に言語機能喪失等の重大な障害が残った。

賠償額:6779万円(平成15年9月30日 東京地裁判決)
事故の概要:男性が夕方、ペットボトルを片手に、下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入し、横断歩道を横断中の女性と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡。

賠償額:5438万円(平成19年4月11日 東京地裁判決)
事故概要:男性が昼間、信号を無視し、高速で交差点に進入、青信号で横断中の女性と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡。

これまで民事上の責任についてのみ触れてきたが、当然ながら刑事上の責任も負うことになる。例えば相手を死傷させた場合、重過失致死傷罪に問われる。くれぐれも自転車だから大丈夫と侮ることがないように気を付けていただきたい。

取材協力弁護士  加塚裕師 事務所HP
愛知県弁護士会所属。加塚法律事務所代表。債務整理、相続、労働問題など幅広く対応。「相談して、本当に良かった」と思って頂けるような親切丁寧な対応を心掛けています。また初回のみ相談料はかかりません。