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最高裁「赤ペンで斜線引かれた遺言書は無効」ーー遺言書無効の条件とは?

11月20日、赤いボールペンで全体に斜線の引かれた遺言書が有効か無効かが争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(千葉勝美裁判長)は1、2審判決を破棄し、「遺言書は無効」という初判断を示し、判決を言い渡した。

昨今の終活ブームと相まって、自筆で遺言を残す人が増えているが、一定の条件下で遺言者の意思を尊重した判断といえるだろう。

さて今回は、自筆で作成する遺言書「自筆証書遺言」が、どんな条件で無効になるのかを相続に強い中島宏樹弁護士に伺った。

自筆する遺言書に法的効力を持たせるための条件とは?

そもそも遺言書を作成する目的とは「自分の死後、自分の財産で揉めることがないように、誰に?どれだけ?どのように?分けるかを決める」ことである。その自分の最後の意思となる遺言書を自筆で作成する場合、どのような条件を満たすと、その意思に法的効力が備わるのかを伺った。

「自筆証書遺言は、遺言者が、全文・日付・氏名を自書し、押印を行う必要があります(民法968条1項参照)」(中島宏樹弁護士)

では、この条件を満たさなければ、無効ということだろうか。

「例えば、手が不自由になり親族に代筆してもらったり、日付を吉日としたり、氏名に雅号を用いたり、遺言者の押印がなかったりした場合、いずれも無効となり、遺言書としての効力は生じないこととなります」(中島宏樹弁護士)

ワープロ等による自筆証書遺言も無効となるのでご注意を。

修正する際にも、一定条件を満たさないと、法的効力は失われる

遺言書を作成し、後に修正したい場合はどのような条件を満たす必要があるのだろか。

「自筆証書遺言を加除訂正するには、遺言者が、その個所を指示し、変更内容を記載して、署名押印を行う必要があります(民法968条2項)」(中島宏樹弁護士)

「例えば、加除訂正を行ったものの、署名押印を忘れた場合には、加除訂正は無効となり、抹消前の遺言が有効となります」(中島宏樹弁護士)

「さらに遺言者が故意に破棄した場合には、その部分については、撤回したものとみなされます(民法1024条)」(中島宏樹弁護士)

自筆証書遺言が無効になる条件に新たに追加された「赤いボールペンで斜線」

今回、最高裁が初判断を示した「赤いボールペンで斜線がひかれた遺言書は無効」は、元々1、2審では有効であると判決が出ていた。有効であると判断したのはどのような理由だったのだろうか。

「赤いボールペンで斜線がひかれた自筆証書遺言の効力が争われた事案において、広島高裁は、赤いボールペンで斜線がひかれたとしても、元の文字が判別できる以上、遺言者が故意に破棄した場合には当たらないとしました」(中島宏樹弁護士)

中島宏樹弁護士が上述したように、民法1024条に照らし合わせて、赤ペンの斜線が遺言の撤回にはならないというのが理由だったようだ。しかし最高裁はその判決を破棄した。

「最高裁は、『赤色ボールペンで文面全体に斜線を引く行為の有する一般的な意味』に照らして、『遺言者がその遺言書の全体を不要なものとし、そこに記載された遺言の全ての効力を失わせる意思の表れと見るのが相当』と評価し、遺言者が故意に破棄した場合には当たるとしました」(中島宏樹弁護士)

確かに「赤ペン」と聞けば、添削や修正を思い浮かべる人が多いだろう。要はその多くの人が持つイメージと照らし合わせて、遺言書も無効としたということだろう。

遺言書を作成する本当の目的を忘れずに!

煩わしい手続きがなく、費用もかからない自筆証書遺言。
紙とペンと印鑑さえあれば、一人でいつでも容易に作成できるため、遺言書を作成するなら真っ先に検討するのではないだろうか。

しかし冒頭述べたように、遺言書を作成する本当の目的は、自分の死後に争いを起こさないことである。遺された家族のために良かれと思った行為が、法的効力を持たない遺言書によって逆効果になってしまっては本末転倒だ。

もしも遺言書の作成を考えている方は、どのような形式で遺言書を遺すか、慎重に検討していただきたい。

執筆  中島宏樹 事務所HP
京都弁護士会所属。京都大学法学部を卒業後、2005年に旧司法試験に合格。その後、法テラス広島法律事務所の初代所長にも就任。現在は弁護士法人京阪藤和法律事務所 京都事務所に所属。相談者に寄り添うことを信条に、冷静と情熱の絶妙なバランスを心掛け、理想の解決に迅速対応します。