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社長個人のお金を会社に貸付ける代表者借入金 放置すると相続が面倒な事に?

中小企業の貸借対照表を見ると、必ずと言っていいほど「代表者借入金」といった科目が計上されています。

これは、会社に社長が貸したお金を意味しています。
中小企業の場合、会社も社長も一蓮托生ですから、会社の資金繰りが悪化すれば、社長は私財を投げ売ってまで会社の存続を図ります。

このように、会社に入れたお金が代表者借入金となります。

返してもらえないのに税金がかかる

このような代表者借入金は、会社の資金繰りが改善したり、資金が潤沢にあったりするような場合でなければ、社長に返金されることはありません。このため、中には10年くらい前から同じ金額の代表者借入金がある、といった会社も多く見られます。

このため、お金を貸していても返してもらうことが難しいのが代表者借入金なのですが、相続税の計算において、その存在が大いに問題になることがあります。

相続税は課税されるのが原則

社長が貸しているお金は、原則として相続税の対象になります。
この点、自分と一心同体である会社に貸しているお金であっても同様で、先の代表者借入金は、社長の相続財産になります。

返してもらう見込みがないのに財産になるのか、とよく質問を受けますが、相続税の計算上は、よほどの事情がない限り、返してもらう見込みはあるという取扱いとなっています。
このため、相続財産として申告せざるを得ないケースの方がむしろ多いと言えます。

債務免除の留意点

このように説明しますと、返してもらえないのに相続税がかかるなら、会社に対して債務免除をした方がいいのではないか、と言われます。
債務免除は有効な方法ですが、免除を受けた法人において、その免除益が法人税の課税対象になる、という大きなデメリットがあります。

このため、免除する場合には、過去の赤字が大きく、多額の欠損金が使えるような場合など、法人税の節税についても考えておく必要があります。

返済は計画的に

このようなリスクがありますので、代表者借入金がある場合には、計画的な返済や債務免除を考えておく必要があります。万一の事態が生じた場合に備えて、長期的な計画を立てましょう。

代表者借入金は、普段の法人税の申告ではあまり問題になりませんので、税理士も後回しにすることが多いですから、税理士任せにせず適正に管理する必要があります。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

photo by Crosa

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