法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 10月から始まる「先物取引の税制改正」ーー元国税の税理士が注意点を解説

このエントリーをはてなブックマークに追加

10月から始まる「先物取引の税制改正」ーー元国税の税理士が注意点を解説

あまり知られていませんが、平成28年度税制改正では、先物取引の課税についての改正が予定されています。原則として、FXなどの先物取引については、その利益に対し、地方税を合わせて一律20%の分離課税で税金がかかります(復興税は除きます)。

反面、先物取引の損失がでれば、その損失は翌年以降3年繰り越しができ、繰り越した損失は将来の先物取引の利益と相殺することができます。

このような特例的な課税がなされる先物取引の範囲が、一部見直されます。

プロを相手とする取引に限定?

税制改正大綱によると、具体的には、商品先物取引業者や金融商品取引業者以外の者と行う店頭デリバティブ取引について、特例的な課税がなされる先物取引の範囲から除かれるとされています。

このような改正がなされる理由が明確ではありませんので、あくまでも想定ですが、商品先物取引業者や金融商品取引業者と言えば、先物取引のプロを意味しますので、プロ以外の者を相手方として行う先物取引については、このような特例的な課税の対象にしない、ということなのでしょうか。

なお、この改正は平成28年10月1日以後に開始する先物取引について適用されるとされていますので、これから始める先物取引について、注意する必要があります。

特例が適用されないとなると

仮に、この改正の対象となる先物取引を行えば、今後はこのような課税の特例が適用されません。この場合、先物取引の利益は累進課税の対象になりますので、大きな利益を計上したり、先物取引以外の収入(給与など)が大きかったりすれば、地方税を合わせて最大で55%もの税率で税金が課税される可能性があります。

それに加えて、この改正の対象となる先物取引の損失は、将来に繰り越すことができないこともできませんし、給与などの他の所得と相殺することもできません。

現状に比して、非常に不利な状況になってしまいますので、今後先物取引を行う場合には、必ず相手方を確認しなければならないことになります。判断を間違えてしまうと、大きな問題が生じます。

ただし、先物取引の範囲など、金融商品については複雑な部分が大きいですから、税理士などの専門家に相談の上、慎重に対応してください。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

社長、その領収書は経費で落とせます!
社長、その領収書は経費で落とせます!
詳しくはこちら