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取得費が不明なら概算取得費よりも、市街地価格指数で申告した方がお得?!

前回、譲渡所得の計算上控除できる取得費について、証明ができなくても5%の概算取得費ではなく合理的な金額とされる金額を差し引くことができるとした事例があると解説しました。
この事例では、土地の取得費が問題になりましたが、契約書などの証明資料がない以上、市街地価格指数という土地の指標を用いて、合理的に取得費を計算せざるを得ないとして、その計算した金額を差し引いています。
なお、このような計算については、こちらでも認められると解説されています。

国税には立証責任がある!

前回も申しましたが、税務調査では資料の保存がないと概算取得費でやらざるを得ない、と言われることが多々あります。しかし、税金に関する立証責任は、原則として税務署にありますので、取得費が正確なものでないことは、国税が立証しなければならないのです。

このため、取得した時期が明らかであれば、合理的に大まかな金額は算定できるはずで、この金額を取得費とすることは認められると考えられます。

なお、以前立ち会った税務調査では、契約書がないため概算取得費しか認めないと指導されたことがありますが、この話を持ち出すと、何事もなく済みました。

一度申告してしまうと、修正は認められない!

ところで、仮に資料がなかったため概算取得費として5%を申告したものを、後日合理的に計算した金額に修正する、ということは認められないことに注意する必要があります。

このような修正を行う場合、実務上は更正の請求という手続きが必要になります。更正の請求は、当初の申告書の計算が誤っていたため、税金を納めすぎている場合、その納めすぎた税金を返してもらう手続きです。

しかし、更正の請求は、(1)法律の適用を誤ったこと、もしくは(2)税金の計算を間違ったことに対してしか認められません。概算取得費は、使うことができるという規定ですので、それを使って税金を計算したことに法律の適用誤りはありませんし、概算取得費として5%を控除することは、計算間違いにも当たりません。

このため、後日、本コラムの内容を理解したとしても、確定申告をしてしまえばアウト、というひどい結果になりますので、注意してください。

執筆  松嶋洋 WEBサイト
平成14年東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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