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経費にできるかどうか悩んだらまずは債務確定基準を知ろう(税理士 松嶋洋)

法人税の世界では、経費となる要件として、債務確定基準が設けられています。債務確定基準とは、各事業年度の末日までに、支払うべき債務が確定したものだけが経費になる、という考え方です。

例えば、広告宣伝などで業者に前渡金を払っても、それを払うだけでは経費になりません。実際に広告宣伝をしてもらっていないので、仮に業者が広告宣伝を行わなければ、その前渡金は不当に業者がお金を得たとして、取り返すことができるからです。一方で、業者がすでに広告宣伝をしたのであれば、お金を払わないとは言えませんので、債務が確定したと言えます。

債務とはすなわち借金ですので、相手からお金を請求されても断れない状況に至った段階で経費になる、というのが債務確定基準の考え方です。

債務確定の判断とは

実務上、債務が確定した段階がいつになるか、問題になることが多いです。法律上は、以下の3つの要件を満たした段階とされています。

(1) 費用に係る債務が成立していること。
(2) その債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) その金額を合理的に算定することができるものであること。

これだけ聞いても、よく分かりませんが、一般的には民法でいう同時履行の抗弁が成立するかどうか、ここが判断材料の一つになると言われます。同時履行の抗弁は、例えば売買などの場合、品物を引き渡すまでお金を払わない、といった形で相手方がアクションを起こすまでは、こちらもアクションを起こさない、という反論が成立する状況をいいます。

債務が成立する必要がある以上、同時履行の抗弁が使えない状況、すなわち相手方からサービスの提供や商品の譲渡を受けている場合には、債務確定していると言えると言えます。

お金さえ払えば経費にしていい?

ところで、聞いた話ですが、税理士の中には、税理士としてのサービスの提供が終わる前にお金を自分に払えば、その支払ったお金はその事業年度の経費になると指導する者もいるようです。決算前に支払えば節税になりますよ、という意味を込めて言うのでしょうが、業務が終わっていない以上、債務が確定しているとは言えませんので、当然ながらこのような指導は誤りです。

おそらく、早めにお金を貰わないと回収が難しくなる、と考えてのことでしょうが、税理士の立場を利用して、いい加減な指導をするなど言語道断でしょう。このようないい加減な税理士も実在しますので、注意してください。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

photo by  frankieleon

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