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裁判の公開や傍聴の自由が認められているのに、なぜ裁判の撮影は禁止なの?

裁判を公開することは憲法で保障されており、基本的には誰でも傍聴することが可能だ。理由は簡単である。公正中立に裁判が行われているかどうかを、誰でもチェックできるようにするためである。この機能が働くことで、司法の独立が確保されているといっても過言ではない。

しかし、なぜか「裁判の撮影」は禁止されている。

イギリスでは2013年から、主に控訴審を扱う裁判所でのカメラ中継が開始された。きっかけはメディア各社や報道協会の働きかけだという。この目的は一つ、「裁判の透明性を高め、国民の司法制度に対する理解を深める」というものだ。

裁判の撮影を認めることは、裁判の公開や傍聴の自由の趣旨に沿っているように思えるが、どうして禁止されているのだろうか。星野宏明弁護士に伺った。

撮影によって証人や被告人が萎縮してしまう可能性がある

単刀直入に、裁判での撮影が禁止されている理由から伺った。

「証人に不当な圧力をかける手段となったり、法廷秩序を乱すおそれがあることが理由です。法廷においては、秩序維持のため退廷を命じる権限が裁判長にあり、これに付随して録音撮影を禁止することができるとされています」(星野宏明弁護士)

確かに、撮影によって、証人や被告人が萎縮してしまう可能性があるだろう。また進行に支障をきたす可能性があることも否定出来ないだろう。

記録公開できる媒体として認めらているのはメモやイラストのみ

しかし開かれた裁判であるべきという趣旨で、裁判の公開や傍聴の自由が認められているなら、イギリスの様に撮影もその一環として考えることが出来るような気もするが…。

「過去には傍聴席で録音録画する権利を争った裁判もあり、最高裁判例で、法廷内のメモ(イラストも可)のみ認められています。よくニュースなどで、法廷のスケッチが使用されるのは、メモや絵しか認められず、撮影が禁止されているからです」(星野宏明弁護士)

「ただし、世間の耳目を集める事件では、審理前の様子に限り撮影が許可されることもあります」(星野宏明弁護士)

過去には裁判の録音録画する権利で争われたこともあったという。

「開かれた司法」の再定義が必要なのかもしれない

冒頭述べたように、司法の独立に一役買っている「裁判の公開」と「傍聴の自由」は、あくまでも公正中立かどうかをチェックする機能として働くだけで、司法に対して意思表示することは叶わない。

では国民に与えられた、司法への意思表示とはなんだろうか。それは「最高裁裁判官の国民審査」である。国民が、司法に対して意思表示できる、唯一の公的制度である。

裁判を公開し、誰もが見ることが出来るというだけで、果たして開かれた司法を実現できるのだろうか。改めて開かれた司法がどうあるべきかについての議論が必要なのかもしれない。

取材協力弁護士  星野宏明 事務所HP
東京弁護士会所属。星野法律事務所 共同代表。千葉県立東葛飾高校を卒業。早稲田大学法学部を大学院飛び級のため退学。その後慶応義塾大学大学院法務研究科を修了。北京大学へ語学留学し、中国広州市にある敬海法律事務所にて実務研修。弁護士法人淀屋橋・山上合同 勤務を経て独立開業。一般企業法務,顧問業務,中国法務,不貞による慰謝料請求,外国人の離婚事件,国際案件,中小企業の法律相談,ペット訴訟等が専門。中国語による業務も対応可能。

ライター 井上 (photo by Wiiii