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「悪質なら重加算税が最高50%」は当然の報いだけど一つ注意が必要(松嶋洋)

平成28年度税制改正では、不正常習者に対するペナルティーを強化するという観点から、過去5年以内に重加算税を課税された納税者について、同様に不正行為があれば、その際に課される重加算税を10%上乗せするという改正が実現しています。

調査官の経験を申しますと、不正行為を行う納税者は、喉元過ぎれば熱さを忘れるで同様の不正行為を行うケースが多いですので、このような改正も必要になると考えています。

この改正は、平成29年1月1日以後に申告期限が到来する税について適用されます。

ネゴ重加に要注意

不正行為は絶対に許されてはいけないですから、このような改正を批判することはできません。ただし、気を付けるべきことはネゴ重加です。ネゴ重加とは、本来は重加算税が課税されるべきではないのに、調査官が交渉によって、重加算税を課すという税務調査実務です。

国税内部では、重加算税を取ると評価がアップしますので、このようなネゴ重加を行う調査官は非常に多いです。ネゴ重加に対しては、とことん戦うべきですが、納税者の中には重加算税が課税されてもトータルの税金が減るならそれでいい、と考える方もいます。事実、私が以前勤めていた事務所の所長税理士は、ネゴ重加でも税金が下がるのであれば、お客様サービスにつながると指導をしていました。

このようなネゴ重加が課されると、先の改正によって10%の上乗せがなされるリスクがありますので、注意しなければなりません。

5年スパンの調査も

ところで、重加算税が課税された場合のデメリットですが、単に高いペナルティーを取られるというだけではなく、税務調査のスパンが短くなりやすいことも挙げられます。過去に不正取引があるのであれば、それが是正されているかどうか、チェックをする必要があるからです。

調査されるスパンですが、現行は特に決まっていないものの、今後は10%上乗せで税金を取れるといううまみが国税にはありますので、重加算税が課税されたのであれば、5年に1回必ず調査しよう、といった処理になる可能性が大きいと思われます。

こういう点からも、ネゴ重加には要注意であり、総額の税金が減るからといっても、安易に妥協してはいけません。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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