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悪質な消費税逃れ「自販機スキーム」はどのように改正された?(松嶋洋)

少し前の話ですが、悪質な消費税逃れとして、自販機スキームというものがありました。これは、住宅用マンションを建築するような場合に用いる節税で、建築年度は自販機の手数料だけ売上を計上することとし、それ以外の事業年度で居住用賃料を計上するということとすれば、本来は大きく制限される消費税の還付金が満額戻ってくる、というあり得ないスキームです。

こんなことはあってはならない、ということで、自販機スキームには平成22年度改正でブロックがかかりました。ただし、そのブロックには大きな穴があった、と言われています。

2年休眠させれば問題なし

これまた信じがたい話ですが、自販機スキームのブロックの規定は、2年間法人を休眠させることで全く機能しなくなる、という欠陥があったのです。このため、法人を作った後、二年間休眠させて3年目で住宅用マンションを買って、従来同様消費税の還付を満額受け取る、といった節税が横行していました。

休眠させればいい、というのではなんのための法律か分かりませんし、安易な節税を憎む国税から大きなしっぺ返しがあると思っていましたが、困ったことに著名なOB税理士も問題ないと書いており、国税としても苦々しく思っていたと思います。

結果として、平成28年度改正において、このブロックをより強固なものとする改正が実現することになりました。

改正内容は?

具体的には、1,000万円を超えるような、高額の設備投資を行った場合、3年間は事業者免税点などの適用を受けられないとされました。自販機スキームは、設備投資をした事業年度の翌期で、事業者免税点などを活用することで効果を得られますが、今後は効果がないことになります。

従来と異なり、休眠しても、設備投資をしてから3年の制限になりますので、休眠することでこのブロックから逃れることはできず、自販機スキームはもう無理と考えるべきでしょう。

国税の責任も重い

本来であれば、2年休眠すれば逃げられる、という間抜けな法律を作らなければよかった話であり、この点国税の責任は重いと考えます。

蛇足ですが、現職時代、ブロックが入る前の平成19年から、自販機スキームは危ないと上層部に改正要望を私は挙げていましたが、すべて無視されていました。ヒラ職員の話など聞いていられるか、とおバカな上層部は判断したのでしょう。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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