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不可解な部分が多い軽減税率が税務調査にもたらす影響とは?(松嶋洋)

細かすぎてよくわからないというのが軽減税率ですが、その軽減税率に対する税務調査も非常にいい加減なものになると予測されます。

その理由として、税務調査実務上、少額不徴収という慣行が国税にはあるからです。

少額不徴収とは?

少額不徴収とは、文字通り小さい金額の税金を取らないことをいいます。具体的には、税務調査であまり追徴税額が大きくならないミスを発見しても、それは大勢には影響しないため、敢えて是正を求めないというのがこの趣旨です。

税務調査において、調査官は、概ね1~2日で3年分の申告をチェックする必要があります。このような短い期間ですべてを見ることなど現実問題としてはできませんから、このような慣行が認められています。こうすることで、金額が大きなミスを重点的にチェックすることになりますので、税務調査の一件当たりの追徴税額も大きくなる効果も見込めます。

納税者にとっても、小さなミスを是正するのに修正申告書を作成するなどすれば、相当の労力がかかりますので、このような実務はある意味歓迎すべきことでもあります。

ただし、悪弊もある

少額不徴収は調査官や納税者の労力と実益に照らして認められている慣行ですが、その反面悪弊もあります。それは、仕事をしたくない調査官にとって、格好の口実になることです。

税務調査では、金額的に小さいミスがあった場合、調査官は敢えてそれを見なかったことにして、労力の省力化を図ります。本来、少額不徴収としていいかどうか、その判断は上司が行うべきですが、上司に報告すれば報告する労力がかかりますし、何より少額不徴収としては行けないと判断されれば、そのミスについて再度税務調査を行う必要があります。このような手間が嫌なので、独断で少額不徴収に該当するかを判断し、敢えて見なかったことにして上司にも報告しないといったことがかなり多く行われています。

軽減税率のミスはたったの2%

この少額不徴収の実務に、軽減税率の区分誤りは非常によくマッチします。8%が10%になるだけですので、ミスとしては2%に過ぎないと考える調査官もいるでしょうし、何より軽減税率の内容はよく分かりませんので、それを是正させるのは非常に面倒です。

となれば、少額不徴収を持ち出して、軽減税率の適用誤りは積極的に是正しない、といった事態が生じるのではないか、と老婆心ながら心配しております。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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