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法人税節税に有効な「役員報酬」も一つ間違えれば大変な事に?!(松嶋洋)

法人税は、役員に対する給料に対し、非常に厳しい規定を設けています。具体的には、役員に対する給与は、以下の3つを除いて原則として経費にならないとしています。

(1)毎月同額を支給するもの(定期同額給与)
(2)あらかじめ税務署に届け出た一定の給与(事前確定届出給与)
(3)同族会社以外の会社が支給する、一定の利益連動給与

中小企業の実務上は、(1)と(2)が問題になります。

定期同額給与とは?

(1)の定期同額給与ですが、毎月同じ金額を支給しなければ、経費にならないとされています。
例えば4月は50万円、翌月は業績が良かったので70万円、再来月は業績が悪かったので30万円、といった形で報酬をだすと、原則として経費にならないのです。このため、予め毎月の支給金額を決めておき、その通りに支出しなければなりません。

なお、支給金額を決めるタイミングは、当期の決算を承認する、来期において開催される定時株主総会の時とされています。この定時株主総会において、来期の報酬を決定する必要があります。

臨時の改定や業績悪化の改定は認められるが….

定時株主総会で来期の報酬を決めるのが通例ですが、例えば急激に業績が悪化し、決めた報酬を出すことができないこともあります。このような場合、報酬を減額したいと会社は考えますが、法律上「著しい悪化」がない限り、報酬を減額することは認められません。このため、ちょっと資金繰りに窮したため減額する、といったことは認められず、銀行からリスケを受けるなど、業績が悪化したことを客観的に証明する必要があります。

その他、急病で役員が出社できないような場合に、報酬を減額できるかといったことも問題になります。法律上、臨時的な事情があっての改定は認められるとされていますが、何が臨時的な事情なのか、法律を読んでもよく分かりません。

言うまでもなく、税金を取る税務署は業績の悪化や臨時的な事情を厳しく解釈しますので、安易にこれらの事情に該当すると判断すると、痛い目に合うことが通例です。このため、報酬を決める場合には相当慎重な対応が必要になります。

遡りや一括支給は不可

加えて、定期同額給与は毎月支給される報酬を言いますので、例えば年俸で役員給与を支払う場合、それは定期同額給与になりません。年俸で支払うのであれば、次回解説する事前確定届出給与を選択する必要があります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後、経団連関連の税制研究所において、法人税制を中心とするあるべき税制の立案と解釈研究に従事。現在は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事するとともに、税理士向けに税務調査・法令解釈のノウハウにつき講演執筆活動を行う。

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