法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 合併による株価対策で賢く相続税対策&スムーズな事業承継を!(松嶋洋)

このエントリーをはてなブックマークに追加

合併による株価対策で賢く相続税対策&スムーズな事業承継を!(松嶋洋)

事業承継で問題になる自社株ですが、その対策として、実務上よく使われる手法の一つに、合併があります。合併すれば、会社の規模が大きくなりますので、相続税の特例として、類似業種比準方式が使える場合があります。

類似業種比準方式とは

類似業種比準方式とは、同業種の上場会社の株価をベースに自社株の評価額を計算する方法です。この方法により計算される株価は、通常の株価計算(純資産価額方式といいます)に比して、相当小さくなることが通例です。

相続税における自社株の計算上、会社の規模を大会社、中会社、小会社の3つに分けて、その会社の株価を以下の方法で計算することになっています。

(1) 大会社 原則として類似業種比準方式
(2) 小会社 原則として純資産価額方式
(3) 中会社 (1)と(2)を併用して評価

詳細は割愛しますが、中会社については、規模が大きい会社であればあるほど、類似業種比準方式で計算される割合が大きくなります。大会社は原則として類似業種比準方式で計算しますので、規模が大きい会社ほど、実際に計算される自社株の評価額が小さくなるという場合もあります。

このため、合併を使って会社の規模を大きくし、相続税を節税するといったやり方が多く見られます。

ネックになるのは?

このスキームでネックになるのは、相続税ではなくむしろ法人税です。法人税において、会社が合併する場合には適格要件と言われる要件を満たさない限り、大きな税金が課税されます。

この要件はきちんとチェックすれば問題はありませんが、内容が複雑ですので、予め税理士に相談した上でミスなく処理する必要があります。

税理士も見落としが多い

その他、注意しなければならないのは、節税のみを目的とするような合併をする場合です。最高裁で先日問題になったヤフー事件がその典型例なのですが、このような合併は合理性がないとして税務署から否認されるケースがあります。

合併の税務は非常に難しいため、勉強しない国税職員は内容が分からず、従来は合併をしても厳しくチェックすることなく、ほとんど問題にしませんでした。このため、税理士もかなりいい加減に処理をしてきたという印象がありますが、近年はその傾向が変わってきたと言われます。

今後の合併はもちろん、過去の合併も問題はないか、再度チェックする必要もあります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

社長、その領収書は経費で落とせます!
社長、その領収書は経費で落とせます!
詳しくはこちら