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中小企業が株主総会の議事録を作らないほうがいい理由とは?(松嶋洋)

法人税においては、大きすぎる役員報酬は経費にならないとされています。このため、役員報酬として妥当な金額がいくらになるかが問題になりますが、経費になる役員報酬の金額は、以下のいずれか大きい方とされています。

(1)役員の職務内容などに照らし、過大と認められる金額(実質基準)
(2)定款や議事録に限度額を定めている場合のその金額(形式基準)

ミスがあれば否認されることは間違いない!

実質基準については、ケースバイケースの判断になるため一概には言えませんが、形式基準については誰の目にも限度額が明らかですから、ミスがあると即国税から否認されます。もっと言ってしまうと、実質基準については否認根拠が難しいので、国税としてはなかなか否認できませんから、税務調査では形式基準が問題になることがほとんどです。

この点、極めて常識的なことなのですが、困ったことに、このような致命的なミスは実務上かなり多く見られます。

限度額のチェックが働いていない

このような単純ミスが起こる理由として、以下のようなことが挙げられます。

1 過去の株主総会で決めたことを会社が忘れていた
2 議事録を税理士事務所で作ったものの、そのチェックが甘く、議事録で決められた以上の金額の報酬を出してしまった
3 税理士がそもそも議事録や定款に定めたことを忘れていた

税理士に原因がある3の理由は別にして、1や2のミスは、経理に労力を割くことが難しい中小企業においては非常に多く見られます。とりわけ、1のミスは、事業承継などで役員や株主に変更があると、見過ごされてしまいますので、再度見直しが必要と言えます。

そもそも作らないのが最もいい

このようなミスが生じますので、個人的には会社設立で必要になる定款は別にして、株主総会などの議事録はできるだけ作らない方がよく、作るにしても報酬については一切記載しない方がいいと考えています。

会社法上、株主総会の議事録は作成する必要があり、報酬についても決める必要があるとされていますが、大企業は別にして、中小企業であればこの点にミスがあっても大きな問題になることはほとんどありません。実際のところ、税務署時代にもたくさんの会社を見てきましたが、株主総会の議事録がないことを問題にしたことは一度もありません。

作って大きなリスクを背負うより、作らない方がリスクヘッジになるでしょう。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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