HOME > 法律コラム > 相続財産から控除される債務。具体的にはどんな債務が控除対象?(松嶋洋)
相続税の計算上、課税されるのは相続により取得した財産というわけではありません。具体的に申し上げると、相続は被相続人の財産と債務の両方を引き継ぐものですので、仮に被相続人の借金があれば、その借金も引き継ぐことになります。
借金を引き継ぐなら、その分税金を納めることは難しくなりますので、一定の被相続人の債務については、相続税の計算上控除することができるとされています。この制度を債務控除といいます。
このため、正確には相続により取得した財産から相続により引き継いだ債務を控除した金額(純財産)に対して相続税が課税されることになります。
注意点として、債務控除できるものは、被相続人のすべての借金ではありません。控除できるものは、確実と認められる債務に限定されます。
よくある例として、被相続人が借金の保証人になっていることがあります。このような保証債務については、確実に弁済を求められるとは言えませんので、原則として債務控除の対象にはならないとされています。
ただし、保証をした主債務者にお金がなく、自分が支払わざるを得ないようなケースについては、確実性が高いとして、債務控除として認められる場合があります。
控除できる債務の具体例としては、以下のようなものがあります。
(1)銀行借入金
(2)未払の利息
(3)治療費などの未払い分
(4)未納になっている税金(被相続人が死亡した場合に納めるべき準確定申告の所得税も含まれます)
その他、被相続人の債務ではありませんが、被相続人の葬式費用についても、債務控除の一環として控除することができるとされています。
ただし、葬式そのものの費用とは言えない、香典返しの費用や初七日法要費用は葬式費用には含まれないとされています。
なお、国内に住所がない相続人については、債務控除が制限される場合があります。
加えて、債務控除ができるのは、相続人などに限定されています。このため、相続を放棄した方は、葬式費用を負担した場合を除き、債務控除を受けることができません。
このように、債務控除には複雑な部分もあり、ケアレスミスが多いですから、注意してください。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。