HOME > 法律コラム > 税務調査で粉飾決算が発覚した時の調査官の本音を元調査官が暴露(松嶋洋)
資金繰りの都合上、中小企業においては、粉飾決算をする会社も見られます。会社の利益をかさ上げすることが粉飾決算ですが、税務調査において粉飾決算がある場合、調査官は残念な気持ちになります。
この理由は、売上の計上もれなど、利益がアップする間違いを発見するために税務調査が行われるからです。粉飾決算であれば、もともと利益をかさ上げしていますので、調査官が見つけたい利益を大きくする誤りが見込めないことが非常に多いですから、調査官としては残念に思います。
このような事情がありますので、調査官はできることなら粉飾決算の会社を調査したくないと考えています。しかし、粉飾決算をしていれば、税務調査がない、ということはありません。
法人税においては、粉飾決算を修正する決算を組まない限り、調査官は粉飾決算を無視して税務調査ができる、といった法律があります。このため、粉飾しています、と税務調査で調査官に申し出ても、「それなら粉飾部分に関係ない部分で税務調査をします」といった形で切り返されることが通例です。
粉飾決算を修正するとは、例えば在庫をかさ上げして粉飾をした場合には、そのかさ上げした在庫について決算書で修正損を認識するとともに、その修正損を法人税の確定申告で否認する、という処理を言います。
このような処理を行った上で、税務署に粉飾決算分利益を大きく申告していましたので、多く申告した税金を返して下さい、という更正の請求を行うと、税務署で内容を調査して粉飾決算の是正が認められます。
ただし、是正が認められたとしても、粉飾決算により多く納めた税金については、すぐには返して貰えません。将来にわたって、法人税から控除する形で返して貰うことになりますので、注意して下さい。
法人税とは異なり、消費税には粉飾決算を修正すべき、という法律はありませんので、粉飾決算はないものとして税金が課税されます。
例えば、粉飾して売上を1000万円過大に申告していたとしても、その1000万円に対する消費税は課税されません。
しかし、決算書の売上と消費税の売上が大きく相違しますので、内容が問題ないか税務署から調査されるリスクが非常に大きくなります。
●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。