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パナマ文書に載った企業が「きちんと申告してるから問題ない」と言ったけど問題の本質はそこではない(松嶋洋)

先日、パナマ文書の問題が大きく報道されました。この文書により、多くの富裕層がタックスヘイブンを利用していることが明らかになったわけですが、その中で「きちんと日本で申告しているから問題がない」といった某大企業のコメントがありました。

日本の制度上、タックスヘイブンに子会社を持つ会社については、一定の要件を満たす場合、そのタックスヘイブン子会社の所得を日本の親会社の所得に合算して申告する必要があります。

このため、タックスヘイブンを利用しても、日本で申告をしていれば課税逃れを行っていないのだから問題がない、ということをこの企業は言いたいと考えられます。

タックスヘイブンの問題点

この点、あるOB税理士は、某経済紙の中で、タックスヘイブンを利用している大企業は、日本で申告しているので大きな問題にならない、と指摘していました。しかし、このように税金の問題だけで短絡的に片づけていい問題ではありません。

タックスヘイブンは、税金がないか若しくは非常に少ない国や地域を意味する、と一般的には知られていますが、それ以上に大きな問題として、透明性がないことが挙げられます。透明性がない、すなわち情報の機密性が高いため、犯罪マネーが流れ込んでいる、といった指摘もあります。

タックスヘイブンに企業が進出するとなると、その企業のマネーの一部がタックスヘイブンの活動資金に充てられることになりますから、結果として、犯罪マネーのマネーロンダリングを助長する、といった結果になりかねないのです。

税金を納めていれば問題なしではない

このため、日本できちんと税金を納めている、租税回避目的でタックスヘイブンを使っているわけではないと言われても。タックスヘイブンには税金以外の問題もあるわけですから、不十分なのです。

国際社会として、透明性のないタックスヘイブンを許していいか、その社会正義も問われる話なのです。パナマ文書の問題を契機に、この情報の不透明さを踏まえて、企業や富裕層には正義感ある行動が求められます。

なお、パナマ文書の問題を経て、タックスヘイブンに子会社を有する会社の課税強化が検討されているようです。この点、今後の政治状況などについても適宜キャッチアップしておく必要があります。

その他、私の解説した以下の動画もご参照下さい。



●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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