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相続税評価額と相続後の売却額に差があった場合どちらが正しい?(松嶋洋)

相続税の申告では、土地の時価が問題になり、この金額は原則として財産評価基本通達という国税庁のルールで計算することになっています。このルールを基に、路線価方式などで計算することになるわけですが、この点よく問題になるのが土地を相続した後、すぐに売却した場合の取扱いです。

一般的に、相続税における土地の時価とは、客観的な交換価値と言われます。このため、利害関係にない第三者間で決まった金額であれば、一般的には時価と認められますので、路線価方式等によらずとも、相続後に成立した売買代金で評価しても問題ないと考えられます。

明確な見解はないが

この点、国税の通達などを見ても明確に書かれていませんが、専門書によると、以下の要件を満たす場合には、売買代金で評価することが可能とされています。

(1)相続開始時から売却時までのスパンが短いこと
スパンが長ければ長いほど、相続時点の時価と売買金額に差が生じてしまうと考えられているからです。この点、どんなに長くても相続税の申告期限(相続開始日から10カ月以内)には、売買が行われている必要があると説明されています。

(2)売買代金に合理性があること
第3者間では原則として合理性がありますが、例えば売り急いだため相当の値引きをしたなど、通常の売買では成立しないような安い金額であれば、時価と見るのは困難と説明されています。特殊事情がなく、合理的に価格が決まった、と説明できるようにしておく必要があります。

一般的には、売買代金の方が相続税の評価額より大きくなりますが、どうしても売れない土地などについては、相続税評価額よりも低い金額で取引せざるを得ない場合もあります。このようなケースでは、上記に従って、売買代金で申告できないかどうか、検討する必要があります。

売買代金の方が高い場合には

反対に、相続税評価額が4,000万円、土地の売買代金が4,500万円と、土地の売買代金の方が大きい場合、こちらで評価する必要があるのではないかという疑問も多く寄せられます。この点、明確な見解はありませんが、相続税評価額は国税が、評価方法を統一させて不利な課税を受けないように決めている金額ですので、原則として売買代金で評価せずとも問題ないと考えます。

ただし、売買代金の方が相続税評価額よりもはるかに大きい場合には、売買代金の方が適正な時価であるとして課税されるリスクもありますから、このような場合には専門家に相談しておく必要があります。


●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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