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配偶者控除を受けるために年収103万の壁を悪用すると…(松嶋洋)

前回、配偶者控除の話をしましたが、年収103万円という壁があるため、制度を悪用する納税者とそれに協力する会社が多くあり、国税は非常に厳しいチェックをしています。

具体的には、配偶者控除の適用を受けたいパート社員Aの要望を会社が受け入れて、本来はAに200万円の給与を支払っているにも関わらず、Aと実在しない社員Bに100万円ずつ給与を支払っている、といた経理をする会社があります。

もちろん、このような給与はすべて架空人件費に基づくものですので、Aが受けるべき給与の課税もれとして、源泉所得税が課税されるとともに、重加算税の対象になります。

架空人件費の税務調査

このような架空人件費について、国税は以下のような資料を総合的にチェックし、異常がある者をピックアップして一人ずつつぶす、という調査を行います。

(1)源泉徴収簿
(2)タイムカード
(3)座席図 
(4)履歴書 etc

よくある例として、源泉徴収簿に名前はあるものの、タイムカードや履歴書に名前がない従業員がいます。架空の人件費を計上する場合、人件費を決算書に計上するための基礎資料となる源泉徴収簿はきれいに改ざんするものの、源泉徴収票の基礎資料となるタイムカードや履歴書は、手間が大きくかかるため、改ざんしないということがほとんどです。このため、タイムカードや履歴書に名前のない従業員は、架空人件費が想定されますので、どのような勤務実態があるか、厳しくヒアリングされます。

その他、非常に厳しく見られることとして、給与の決済が振込ではなく現金のケースが挙げられます。銀行口座に記録が残る振込とは異なり、現金決済であれば記録が残りませんから、不正につながりやすいからです。

あくまでも、存在しない社員に対する人件費の支払いが架空人件費ですから、実際に存在する従業員であればもちろん問題ありません。

配偶者控除の悪用の場合には

年収103万円の壁を悪用する場合、給与を103万円より多少少なくするよう会社に申し出ることになりますから、100万円前後の支給額がある従業員については、税務調査で厳しく追及される場合があります。このため、このような従業員がいる場合には、きちんと説明できるようにしておく必要があります。

●執筆:元国税調査官・税理士 松嶋洋 WEBサイト
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。国税局を退官後は、税務調査対策及び高度税務に関するコンサルティング業務に従事。

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