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税務調査で狙われやすい役員退職金ーー金額の正しい算定方法は?(松嶋洋)

税務調査で問題になる役員退職金については、適正額を超えない場合、経費になります。この適正額については、以下の平均功績倍率法で算定されることが通例です。

役員退職金の適正額=最終報酬月額×勤続年数×平均功績倍率

上記の計算中、平均功績倍率がいくらになるかが問題になりますが、退職者が社長であれば、原則として3.0倍の平均功績倍率で計算できるという神話があります。このため、多くの中小企業で3.0倍の平均功績倍率を計算していることが通例ですが、この考えは非常に危険と言われていますので、注意してください。

1.18倍や1.9倍の事例もある

実際のところ、適正な平均功績倍率が1.18倍であるとか、1.9倍であるとした事例が近年多く見られます。倍率の低さはもちろんですが、他に注目すべきこととして、これらの事例において、納税者は3倍前後が認められてしかるべきと主張していることがあります。

このような主張を審判所や裁判所は受け入れていない訳で、最終的にはケースバイケースの判断にならざるを得ないことから、慎重な対応が必要になると言えます。いずれにしても、高くないことを主張できるよう、金額の根拠については安易に3倍と取るのではなく、社長の功績などについて税務署に詳しく説明できるよう措置しておく必要があります。

成否を分けるのは税務調査対策

とは言え、いくらが妥当なのか、断言できる基準はありません。このため、国税から認められるかどうかは、税務調査の交渉次第によります。

このあたり、調査官のさじ加減で決まる部分も大きいですが、一つ言えることとしては、適正な金額は国税も知りようがありませんから、調査官としても、退職金の適正額がいくらかということをあまり問題にしたくはありません。確実な基準がない以上、確実に納税者とトラブルになるからです。

このため、金額の多寡にもよりますが、国税としても引きやすいところでもありますので、決して妥協することなく、どこまでも戦いましょう。

朗報としては

一点、朗報としてですが、この平均功績倍率について、7.5倍と認められた事例があります(東京高裁昭和52年9月26日判決)。このように、決まっているようで決まっていないのが平均功績倍率法の計算ですので、最終的には国税を引かせる交渉力で是非が決まります。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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