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債務免除益の計上時期の落とし穴とは(松嶋洋)

関係会社との取引に多いですが、債務超過の関係会社に対する貸付金などについて、回収の見込みがないことから債務免除を行う、ということがあります。この債務免除ですが、債務という負担を軽減されたという利益がありますので、その債務免除益に対しては、収益として法人税の対象になります。

問題になるのは、債務免除益について、いつ収益として計上するかということです。債務免除益についても収益には変わりませんので、大原則である権利確定主義に従って計上すべき時期を決定することになります。

権利確定主義とは

権利確定主義とは、収益は、その収入すべき権利が確定した段階で計上すべきという原則を言います。ここでいう権利が確定したとは、原則として法律上権利が確定した段階を言います。一般的な商品の売買であれば、その段階は、売主からの代金の請求を断ることが不可能になる、売主から買主への商品の引渡し時とされています。

債務免除益については、債務免除の効果が生じた時点において、法人税の対象になることになります。

債務免除の効果が生じた時点についてですが、具体的には以下のいずれかで判断することになると考えられます。

1 債権者が債務者に対する売掛金について、書面等により通知することで、債務を放棄し若しくは免除している場合
2 債務免除の対象になる債務が、時効により消滅しているとき

1は別にして、2については、前回も述べた時効の援用が問題になります。このため、単に消滅時効の期間を経過しただけでは原則として収益にはならず、あくまで債権者に対し、債務を支払わないと主張して初めて債務免除益が立ちます。

長期の未払金に対する税務調査

ところで、税務署の調査官は時効に詳しくありませんから、単に関係会社に対する債務について、長期間にわたり全く支払いがない場合、債務が存在していないも同然として、債務免除益を計上すべきなどといった筋違いな指摘をする可能性があります。

既に見た通り、時効は援用しなければ意味がありませんし、仮に長期間に渡り返済をしていなくとも、その後一部でも返済すれば、返済する意思がある、すなわち時効を援用する気がないとして、消滅時効は完成しないことになっています。

この点、しっかりと反論する必要があります。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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