HOME > 法律コラム > 平成29年度から変わった株価評価と、それに与える特別償却の影響とは?
法人税の特例として、取得価額の一定割合を一括で経費とすることができる特別償却という制度が設けられています。代表例としては、中小企業が所定の機械装置等を購入した場合に適用される中小企業投資促進税制で、この制度の対象になる場合、通常の減価償却と別枠で、取得価額の30%を一時に経費とすることができます。
特別償却については、法人税の節税につながるだけでなく、株価評価を引き下げる効果もあります。
規模の大きな非上場会社の株式は、原則として類似業種比準方式によって株価の計算を行いますが、この場合、配当金・利益・純資産価額の3つの要素が影響します。特別償却をする場合、経費が大きくなって利益は大きく下がりますし、特別償却の対象になる資産の取得価額から特別償却額は減算されますので、純資産価額も下がります。このため、特別償却の対象になる、所定の設備投資を行った段階で株式を贈与等する節税が可能になります。
とりわけ、前回も申し上げた通り、平成29年度改正により、純資産価額が株価に与える影響が大きくなっていますので、有効に活用したいところです。
一方で、非常に混乱する内容になっていますが、純資産価額方式で非上場株式を評価する場合、特別償却の影響は全くありませんので注意する必要があります。
純資産価額方式は、原則として規模が大きくない非上場会社の株式を評価する場合に適用される方法で、会社の資産・負債を相続税評価額によって評価し、一定の調整を加えて算定した純資産価額を基に、株価を計算する方法です。ここで問題になるのは、相続税評価において、機械などの固定資産は、原則として売買される金額で評価されるということです。
特別償却は、あくまでも設備投資をした会社の優遇税制ですので、その設備投資をした固定資産の売却金額に影響するものではありません。売却金額に影響を与えるのは、固定資産の使用年数などですから、取得した段階で特別償却をしたとしても、特別償却に応じて売値も下がる、ということはありません。結果として、売買される金額は、特別償却を考慮しない金額となり、その金額で純資産価額方式の基礎になる純資産も計算されます。
このあたり、間違いやすいところでもありますので、注意してください。
専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。