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国税の明らかな非に「謝罪があるまで調査は受けない」という交渉がNGな理由

消費税は、原則として一事業年度において預かった消費税(売上に対して課される消費税など)の合計額から、支払った際に課される消費税(商品仕入れなどの際、本体価格に上乗せで請求される消費税など)の合計額を減算して計算します。ここでいう、支払った消費税を減算する仕組みを仕入税額控除といいます。

仕入税額控除については、その支払いに係る請求書及び帳簿を保存し、それを税務調査で提示できるようにしておかなければ適用が認められないという制度があります。このため、例えば帳簿を破棄しているような悪質な納税者については、仕入税額控除が認められず、預かっている消費税の全額を納税しなければなりません。

仕入税額控除の否認はとんでもない

仕入税額控除が否認された場合には大変な不利益を被ることになります。例えば、売上が8000
、消費税がかかる経費が5000万としますと、通常であれば240万円(=(8000万円-5000万円)×8%))の納税になりますが、仕入税額控除が否認されると経費は認められないことになりますので、640万円(=8000万円×8%)の納税になります。

このようなとんでもない課税が生じますので、帳簿や請求書の保存には要注意と言われるわけですが、国税としてもこの点十分に理解しており、多少資料の保存に不備があっても、取引内容を十分に確認でき、かつ悪質性がない場合には。法律上問題が残るにしても穏便な対応をするのがほとんどです。

もちろん、脱税のために帳簿を廃棄するなど、悪質な納税者については確実に仕入税額控除が否認されますから、不正行為はもっての外です。

調査非協力にも適用される

ところで、この仕入税額控除の否認は、税務調査において調査官に帳簿を適切に見せないような場合にも、適用することができるとされています。このため、いわゆる税務調査非協力についても、仕入税額控除の否認がなされます。

この場合、確実に押さえておかなければならないことは、調査官の失礼な態度など、国税に非があった場合の取扱いです。このような無礼な行為については、当然に国税に抗議するべきですが、謝罪があるまで調査を受けない、といった交渉は決してやってはいけません。謝罪があれば調査を受けるため、調査非協力には当たらないと考えがちですが、このような場合にも帳簿が確認できないとして仕入税額控除の否認がなされ、大きな不利益を被る可能性があります。実際のところ、このような非協力をして、35億円もの消費税を追徴された事例があります。

人情としてはわかりますが、調査に協力しないことは、国税の交渉材料としてはいけないのです。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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