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夏目漱石の「こころ」にでてくる「先生」と、遺産を誤魔化した「叔父」における相続問題を弁護士が解説!

朝日新聞で好評再掲載中の夏目漱石の「こころ」。

主人公「私」の師である「先生」が父親が亡くし、ひとり息子である「先生」が遺産を相続しました。まだ学生の「先生」は、父親の弟である叔父を後継人として遺産の管理を全任します。しかし、この叔父が知らないところで財産をごまかし、以降「先生」はすっかり人間不信になり、世捨て人となります。

「一口でいうと、叔父は私の財産を胡魔化したのです。事は私が東京へ出ている三年の間に容易く行われたのです。」(夏目漱石「こころ」より)

「こころ」から学ぶ相続問題について塩澤弁護士にお聞きしてみました。

父親の遺族は、一人息子の「先生」と、父親の弟である叔父がいましたが、遺言書がなかった場合の相続割合は通常、どのようになりますか?

全て、息子である「先生」が相続することになり、叔父の相続割合はゼロです。

叔父に相続権があるケースというのは、父親(被相続人)に子供がいなくて、父親の両親も亡くなっている場合のみです。

相続人である「先生」は、財産を叔父に預け、ごまかされました。「先生」の知らないところで、財産を搾取することは可能なのでしょうか?

管理の形態によっては可能です。

通常、遺産としては、不動産、銀行預金、株式などがあり、亡くなった後、相続税申告のためや、遺産分割のため、そして、本件のように遺産の管理をお願いする場合にも、それぞれの金額を、まず明らかにします。

そして、遺産の管理をする人が、相続人名義の銀行カードを利用したり、パスワードを把握した上で株式のインターネット取引等で遺産を換金することは可能であり、そういう意味で財産を搾取することは可能です。

もっとも、遺産の管理をする最初の財産状況と、その後の財産状況に違いがある場合、不当に搾取・横領などしていないかについては、遺産の管理をする人が、振込明細書や領収書等の証拠を用いて証明しなければなりません。
したがって、上記のようなケースで、遺産の管理をする人が、不当に財産を搾取した場合には、容易に責任追及されてしまうことになります。

ただし、たとえば、遺産が現金で、最初の財産状況をきちんと示した契約をせずに信頼関係のみで、相続人「先生」が、遺産を管理する人「叔父」に、預けてしまった場合で、その現金を「叔父」が搾取してしまった場合には、「叔父」に対して責任追及することは困難となります。最初にいくらの現金を預けたか、ということを、相続人「先生」が証明しなければならず、それは容易ではないからです。

「先生」が叔父を訴えるとしたら、叔父はどのように罰せられるのでしょうか?

「先生」が、「叔父に最初にいくらの遺産を預けたか」「その後、叔父がいくら不当に搾取したか」を証明できるとした場合、「先生」は「叔父」に対して、民事的な責任追及のみならず、刑事的な責任追及もできます。

具体的には、民事的には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求、刑事的には、横領罪(刑法252条・5年以下の懲役)として告訴することができます。

取材協力弁護士 塩澤彰也

平成12年に弁護士になり、6年間のいそ弁時代を経て、平成18年から、杉並区の荻窪駅前に事務所を構えました。当事務所では初回の法律相談は無料とし、気軽に相談に来ていただけるようにと考えております。
その初回の相談で問題が解決することもよくあります。
依頼者に喜んでもらえることが、私のやりがいとなっています。
どうぞよろしくお願いいたします。

ライター  みんみん