HOME > 法律コラム > 法人税節税の王道「社宅の活用」の注意点を専門家が解説!
法人税の節税の王道として、社宅の活用があります。会社で社宅を設け、その社宅に社長が住めば、会社は社宅に係る賃料などのコストを経費とすることができます。もちろん、社宅として貸す以上は社長から家賃を徴収する必要がありますが、この家賃は同様の物件を借りる場合の相場としての賃料に比して、相当低くなりますので、かなりの社宅に係るコストを経費とすることができます。
この社宅について、よく問題になることの一つに、社長が個人で購入したマンションや一軒家を法人で借り上げ、その後社長に貸し付けることで社宅とすることができるか、という問題があります。結論から申し上げますと、明確な見解が国税から出ているわけではありませんが、このような取扱いは認められないと言われています。
社宅とは、会社の都合で選ぶべきものですから、社長などの個人的な趣味が反映される物件を社宅とするのは、趣旨にそぐわないと言われます。このため、入居する社長が自ら入居する住宅を探して社宅として使用者に借り上げさせるといったことは認められないと考えられています。
社長が自分で購入したマンションであれば、会社の意思ではなく社長の意思で決めたものですので、社宅として見ることは難しく、結果として社宅とした物件の適正な賃料と、社長が社宅使用料として支払った金額の差額について、住宅手当に準じて給料として課税されると考えられています。
ところで、社宅について非常に質問の多い論点として、会社が大家に支払う社宅の賃料について1年分まとめて支払った場合、短期前払費用の特例が使えるかどうか、という話があります。短期前払費用は、以下の要件を満たす前払費用をいいます。前払費用ですので、本来は翌期以降の経費とすべきものですが、短期前払費用の要件を満たす費用については、支出した時点でその全額を経費とすることができます。
(1)支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係る前払費用であること
(2)毎期継続して同様の会計処理を行うこと
(3)金額的に重要なものでないこと等
これだけ見ると、1年分まとめて社宅家賃の前払いをしていれば、社宅家賃についても短期前払費用の要件を満たすと考える方もいらっしゃると思いますが、結論から申し上げますと、社宅家賃は原則として短期前払費用の対象にはなりません。
会社が支払う社宅の家賃(費用)は、社長からもらう社宅の使用料(収益)と対応させる必要があるとされています。費用収益対応の原則がありますので、費用だけ先に発生する短期前払費用の適用はないことになります。
専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。