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「節税目的の養子」を民法と税法のそれぞれの異なる視点で考えてみる

相続税の節税の王道に、養子の活用があることはよく知られています。養子の数に制限はありますが(注:実子が居ればひとりまで、実子がいなければ二人まで)、養子を増やすことで相続税の基礎控除を増やしたり、保険金の非課税金額を増額させたりすることができます。このため、例えば娘の配偶者を養子にするなどして相続税対策をする納税者は多くいます。

この養子の節税について、先日注目すべき最高裁判決が出ています。節税目的で養子にすることが、無効と言えるのかどうかが問題になった事件です。

高裁では違法であったが…

この事件では、節税目的で孫と結んだ養子縁組が有効かどうかが争われたものです。養子が増えれば、法定相続人が増えることから、実子である法定相続人が養子縁組は無効と主張していました。

最高裁判決前の高裁判決では、税理士が勧めた相続税対策として養子縁組をしたにすぎないため、孫との間に真実の親子関係を創設する意思はなかったと認定され、養子縁組が否認されています。

しかし、最高裁では「節税の動機と縁組の意思は併存し得る」と判断して、節税目的であっても養子になる意図があることから、節税目的の養子縁組について有効と判断しました。このため、現行の実務で行われている養子の節税について、少なくとも民法上は問題ないと考えられます。

民法と税法は異なる

税法でよく問題になることですが、民法には契約自由の原則(人が社会生活に際して結ぶ契約は、公の秩序や強行法規に反しない限り、当事者が自由に締結できるという原則をいいます)があるため、税金を少なくするように取引を操作できる問題があります。当事者で合意すればいいわけですから、当然ながら税金が少なくなるような契約を考えるわけで、普通はあり得ないような契約で取引をすることも多くあります。

このような場合には、民法に関係なく、原則としては税法を改正してブロックするべきとされています。事実、養子の節税についても、行き過ぎた養子縁組を防止する条文が相続税法に設けられています。

すなわち、税で問題があれば税法で対応することになりますから、節税目的の取引は民法上直ちに無効になることはないわけで、この点からも節税目的の養子は民法に違反しないと考えられます。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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