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役員と株主がほぼ一致している同族会社が気をつけたい株式の取り扱い方

多くの中小企業は役員と株主がイコールである同族会社ですが、このような同族会社の役員が退職する場合、注意したいことは退職の際には自分の持つ株式なども処分した方が望ましい、ということです。役員を退職したため会社の経営権はなくなったとしても、株式を持っていれば、会社を支配する権限があるわけですから、実質的に見て退職したとは言えないのではないか、このような判断が税務調査でなされる可能性が大きいからです。

分掌変更の場合には要注意

とりわけ注意したいのは、役員の職務内容が激変したため、実質的に退職したと言えるとして、退職金が認められる役員の分掌変更の場合です。分掌変更の退職金については、国税庁の通達に具体例が書かれていますが、この通達の中で取締役が監査役に分掌変更する場合の取扱いとして、所定の割合の株式を持っていれば、それは認められないと明記されています。

取締役が監査役に分掌変更する場合の具体例として書かれていますので、必ずしもあらゆる分掌変更について適用されるわけではありませんが、分掌変更した役員の株式等の数も考慮される可能性があると考えるべきと言われています。

その一方で

このため、確実を期すのであれば、退職する役員は退職に対して自社の株式も処分した方が望ましいと考えられますが、役員は会社を経営する立場であり、会社を支配する株主とは性格が全く異なります。このため、株主であったとしても役員でなければ会社を経営する権限はないわけで、株主であることは役員が退職したと言えるかどうかの判断に直接的には影響がないと考えられます。

実際のところ、多くの税金の裁判では、同族会社が支給した役員退職金について、その役員がオーナー株主である以上は退職したとは言えない、という判断をすることが多いですが、株主であることと役員の退職には影響がないため、株主であったとしても、退職金を支給できるとした判決(東京地裁平成20年6月27日判決)があります。

落としどころとしては

この判決はかなり画期的なものとして、税理士の間では非常に有名なものですが、判例など勉強しない調査官は基本的に知りませんし、知っていたとしても自分に都合の悪い判決は無視する傾向がありますので、この判決を前提に交渉するのはリスクが大きいと考えられます。

退職する場合には株式を手放すことを前提に考え、それがどうしても難しい場合には、リスクを覚悟してこの判決を使って交渉する。このような落としどころで考える必要があります。

専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。

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