HOME > 法律コラム > 一円でも多く税金を取ることを考える国税とそれに追い打ちをかける法改正
原則として、税務調査が実施される前までに自分で申告の間違いを発見して修正申告をすれば、その修正申告により修正した間違いについては、ペナルティーの対象にならないとされています。このため、従来は税務調査に入ると言われた後、実際に会社に臨場される前までに申告書を見直して自主修正をすることでペナルティーを削減するという対策が広く行われていました。
この点、税金を取ることしか考えない短絡的な国税組織はそれをけしからんと考えたため、平成28年度改正により税務調査を行うと通知した後については、原則として自主修正を認めないという改正が実現しています。
この改正は、平成29年1月1日以後に申告期限が到来する国税について適用されます。
少し専門的ですが、税務調査が実施される場合、原則として国税は事前通知を行います。事前通知は、以下の事項を納税者に伝えなければならないとされています。
1 実地調査の日時
2 調査場所
3 調査の目的
4 調査対象税目
5 調査対象期間
6 調査対象とする帳簿などの資料
7 その他一定の事項
一方で、自主修正が制限される調査通知については、以下の事項だけの連絡で足りるとされています。
1 調査を行う旨
2 調査対象税目
3 調査対象期間
3つの事項を通知すれば、そこから自主修正が制限されることになります。つまり、あらかじめ納税者に連絡すべき事項(事前通知)と自主修正が制限される連絡事項(調査通知)は異なっており、かつ調査通知の方がはるかに簡単ですので、今後は連絡が来れば原則として自主修正は認められないとされます。
なお、あくまでも平成 29 年1月1日以後に申告期限が到来する国税から適用されるため、それ以前に申告期限が到来している国税については、従来通り自主修正が認められます。
このような簡単な事項の連絡だけで自主修正を制限するとしたのは、調査場所や日時を打ち合わせるとなると時間がかかるため、自主修正を制限できるタイミングが遅くなる可能性があるからです。調査通知事項は特に打ち合わせも必要ありませんので、国税にとって極めて都合のいい改正と言えます。
国税には、税務調査をすると言って内容を見直して、ペナルティーを逃れるのはカンニングと一緒、といった理解があると思いますが、国税の内部の研修試験では、試験問題を前バラシすることが多くあり、このような姑息な研修試験と自主修正の姑息さは大きな違いはないと考えますので、どうにも割り切れないです。
専門家プロフィール:元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。実質完全無料の相談サービスを提供する。