法律問題は相談LINEで解決!

HOME > 法律コラム > 企業税務に詳しい税理士が解説する「グループ法人税制」の概要と注意事項!

このエントリーをはてなブックマークに追加

企業税務に詳しい税理士が解説する「グループ法人税制」の概要と注意事項!

平成22年度改正により、グループ法人税制という制度が導入されています。これは、100%の支配関係がある複数の法人について、法人は異なるものの、一つの法人として所定の規定を適用する制度です。

例えば、会社が支店をつくった場合、その支店の口座に本店の口座からお金を送金してもその送金に対して法人税はかかりません。支店は単に拠点に過ぎず、法人は一つですから、利益は発生しないからです。自分が持っているA銀行の口座からB銀行の口座のお金を移しても、税金がかからないことと同様です。

グループ法人税制は、それを異なる法人にまで拡大させるイメージです。同じ一人の株主甲法人に100%支配されている乙法人と丙法人がある場合、乙法人と丙法人はそれぞれ甲法人の支店に過ぎないとみなして、乙法人から丙法人に送金しても税金はかからないとするのがこの制度の骨格です。

全部というわけではない

ただし、100%の支配関係がある複数の異なる法人を常に支店と見るかと言えばそうではなく、一定の規定についてだけ支店と見ることになります。具体的には、以下のような取引について適用されます。

1 100%の支配関係がある法人間の配当金
配当しても、配当を貰った法人は全額利益になりません。すなわち、無税で配当ができます。

2 100%の支配関係(トップは法人である場合に限られます)がある法人間の寄附金
寄附をしても、寄附金は全額経費になりませんし、貰った側では、全額利益になりません。本店と支店、支店間の送金と同じように無税でお金を動かせます。

3 100%の支配関係がある法人間の一定の資産の譲渡
一定の資産を譲渡した場合、譲渡をした法人では譲渡損益の計上ができません。このため、含み益や含み損があっても、これらを利益や損とすることができません。なお、これらの含み益や含み損は、譲渡を受けた法人が、100%の支配関係のない他人に譲渡した場合に、計上することができます。

ただし、グループ法人税制は複雑なので、使う場合には専門家である税理士に相談しながら適用してください。

資産の譲渡が特に問題になる

上記のうち、実務上は3の100%の支配関係がある法人間の一定の資産の譲渡が問題になります。例えば、含み損がある土地を持っていた場合、それを他人に売ればその含み損を使って節税ができますが、このような支配関係がある法人に売っても、一定の要件を満たす土地については、その含み損が使えないからです。

グループ間で資産を売却して節税したい、というニーズは多くありますが、そのためにはグループ法人税制の適用から外れる必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。税務調査で望ましい結果を得るための法律論・交渉術に関する無料メルマガを提供中

税務署なんて怖くない
税務署なんて怖くない
詳しくはこちら