HOME > 法律コラム > 【後見制度の悪用事件編】弁護士として法律を守る立場でありながらどうしてこんなことが起こるの?個人でもできる対策も弁護士が解説!
後見制度は2000年から開始されました。
そもそも後見制度とは、認知症や精神障害などで判断力が不十分な人の財産管理を代理する制度です。
後見制度は、制度自体の浸透と高齢化の加速に伴い利用者は年々増加傾向にあります。
しかしその一方で、後見人として選任された弁護士が、法律を守る立場でありながら、勝手に不動産を売却をしたり、預金を無断で引き出す事件が後を絶ちません。
今回はこの問題となっている背景と、その対策について高島秀行弁護士に話を聞いてみました。
判断能力の不十分な方(以下「本人」と言います)が自分で財産管理はできないと、身内の方が判断した場合、逆に、本人の介護のためにお金が必要だけれども、本人は認知症などで持っている不動産について有効に売買契約を結べない場合などには、財産管理や不動産の売却を本人代わってする人が必要となります。
これが成年後見人です。
成年後見人は、家庭裁判所に選任の申し立てをします。申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内と親族ですが、一般的には、本人が自分で成年後見を申し立てられる状態にはないと思います。
申立には、本人が財産管理をするための判断能力が不十分だという意思の診断書等が必要となります。
この申立に基づき、家庭裁判所では、成年後見人を選任します。
財産管理を巡って、本人の子供たちや配偶者が争っているという状況がなければ身内の方が成年後見人になることも可能です。
争いがあるような場合は、中立の立場で法的な知識のある弁護士や司法書士が選任されることとなります。
同業者として恥ずかしいのですが、成年後見人に選任された弁護士による本人の財産の横領事件が連続して起きています。
その原因として考えられるのは、弁護士数の急激な増加による弁護士の収入の減少です。
良いか悪いか、わかりませんが、これまでは、弁護士の数は少なく、就職先がないとか、仕事がないということもなく、司法試験に合格するのは難しいけれども弁護士になれば一般のサラリーマンの方よりも多い収入を得ることができました。ところが、司法改革により、合格者を以前の年間500名から2000名の4倍に増やしました。
しかし、日本経済はちょうど長期デフレの時期だったことから、弁護士の仕事は増えておらず、仕事が減って、収入が減り、他人のお金に手を付けないと事務所を維持できない弁護士が出現したということだと思います。
現在、本人の財産の額が大きい場合は、日常的な生活に必要な現預金の一部を後見人が管理して、不動産や大きな額の預貯金は信託銀行に信託して運用管理してもらう成年後見支援信託という制度が運用され始めました。
ただ、この制度は、信託銀行に運用を委ねることから、信託報酬を支払っても財産を維持できるくらい財産の額が大きいことが必要となります。
弁護士の不祥事については、裁判所も、弁護士会もこのようなことを起きないよう東京では弁護士でも弁護士会で研修を受けないと成年後見人に選任されなくなりました。
また、成年後見人は、裁判所や弁護士会に財産の管理状況について報告義務が課せられるようになりました。
親族や配偶者として、成年後見人の不祥事を防止するのは、なかなか難しいですが成年後見人が提出する本人の財産の管理状況を書いた報告書を閲覧しておかしいところがないか確認するという方法はあります。