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税務調査で経営者の個人情報を求められても開示する義務もなければ意味もない理由

税務調査の際、調査官から経営者の家族構成や年齢、そして趣味などの項目が書かれたA4一枚の用紙を交付され、それに記入するよう指導されることがあります。この書類は、経営者の個人情報を国税が入手するために記載を求められるものですが、このような書類に記載する必要はありません。

会社の税務調査では、納税者の了解を得ない限り、国税は経営者の個人情報を入手してはいけないことになっています。このため、提出を拒否することができます。

東京国税局では全面廃止

ところで、このような書類は、私の現職時代は税務調査の開始時に経営者に交付し、記載を要請していました。しかしながら、個人情報保護法という個人情報に関する法律が平成17年4月から施行されたことに伴い、安易に経営者の個人情報を入手するのは問題があるとして、このような書類を交付してはいけないという指導がなされました。

しかしながら、このような指導は、私が以前所属していた東京国税局の取扱いのようで、東京国税局以外の国税局、例えば関東信越国税局などの国税局の税務調査においては、未だに提出を要請されています。このため、税務調査を実施する国税局によっては、未だに個人情報保護法の観点から問題があるこのような書類の提出が求められますので、注意したいところです。

なお、本来は国税局に関係なく税務調査の手続きを揃えなければならないはずですが、縦割り行政と縄張り意識が強い国税は国税局が変われば処理が違っても何も問題ないと甘く考えていますので、きちんと抗議する必要があります。

個人情報を出さない方がいい理由

このような、会社の税務調査で本来国税が入手してはいけない、個人情報に関する情報を漏らしてしまうと、国税としては調査がやりやすい納税者と判断してどんどん要求がエスカレートしてくる可能性があります。断れば、それ以上は強制することができませんから、税務調査に毅然と対応するというスタンスを見せるためにも、確実に断ることにしましょう。

加えて、近年は国税の情報漏えいが普通にあり得ます。国税職員の守秘義務は非常に厳しいため問題ない、などと言いますが、その実情報漏えいについては甘いのが現実ですから、万一のリスクに備えて法律で提供しなければならない以上の情報は国税に入手されないよう努めるべきと考えます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。税務調査で望ましい結果を得るための法律論・交渉術に関する無料メルマガを提供中

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