HOME > 法律コラム > 最も簡単で低コストな節税方法「事業年度変更」を税理士が解説
最も簡単にできる合法的な節税手段の一つに、事業年度変更があります。事業年度変更をうまく使うことで、合法的に法人税の対象になる利益を先延ばしにすることができます。具体的には、3月決算の会社が3月に極めて大きな売上が見込まれている場合、決算期を2月に変更するとすれば、2月で事業年度が区切られることになり、4月~2月が一事業年度、3月~2月が一事業年度となりますので、その大きな売上を来年の3月まで1年間繰り延べることができます。
事業年度を変更する場合、手続きは非常に簡単です。具体的には、株主総会を開いて定款の事業年度を変更し、その変更した事業年度を税務署に届ければ終了です。この届出ですが、特に期限は決まっていないため、遅滞なく税務署に提出すれば問題ありません。大企業は別にして、中小企業は株主総会を開くにしてもとても簡単ですから、事業年度は簡単に変更することができます。
唯一の制限は、事業年度は1年を超えてはいけないということだけです。例えば、3月決算の会社が3月の決算をやりたくないため、その決算を引き延ばすために3月になって2月に事業年度を変更するような場合は、事業年度が1年を超えて1年11カ月となりますので、認められません。反面、1年に満たない事業年度に変更することは、何も問題がありません。
この点、実は先延ばしも有効と言われています。設立1期目の会社が該当しますが、4月に6月決算の会社を設立した場合、6月までに事業年度変更の手続きを取れば、3月までは伸びても事業年度は1年間ですので、6月以降3月まで事業年度を変えることができます。
事業年度変更が特に役に立つのは、居住用マンションを建築して、消費税の還付の請求をするような場合です。居住用マンションを建築すると、入居者から賃料が発生しますが、このような賃料が大きくなればなるほど、消費税の還付の制限が大きくなります。
建築してから、その建築の日の属する事業年度の末日までの賃料について、建築を行った年度の売上として計上しなければなりません。このため、建築終了後に事業年度変更を行い、事業年度を短くすれば、その分その年度の賃料売上を小さくすることができますので、還付を受けやすくなります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。税務調査で望ましい結果を得るための法律論・交渉術に関する無料メルマガを提供中。