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贈与税の時効が適用になるかどうかは、実は経過年数だけじゃない

贈与税の時効は、原則として6年、不正取引と認定される場合には7年とされています。このため、仮に10年前に贈与があれば、贈与税の時効が成立しているため税金は課税されないと言われます。

実務上、相続税の申告書を作成する際、贈与税の申告はないものの、7年超前に被相続人が親族に多額の現金を送金していることが判明する場合があります。このような場合、贈与税の時効が経過しているため問題ない、と考える方も多いですが、実はそれほど単純な話ではありません。

贈与契約が成立していることが大前提

贈与税は、個人間の贈与に対して課税されるものです。ここでいう贈与は、民法の贈与と同義であり、贈与をする方の贈与をする意思と、贈与を受ける受贈者の贈与を受ける意思が合致して初めて成立します。言い換えれば、単に現金を送っただけでは贈与は成立せず、送金を受ける方が現金を貰う、という意思表示をする必要があるのです。

以上を踏まえた場合、例えば被相続人が孫に8年前に1千万円送金していたとして、その孫がその送金を知らなかったのであれば、贈与は成立していませんから、時効も成立していないことになります。このため、過去に多額の出金があったのであれば、その時の事実関係を調べる必要があります。

単に知らないことはもちろん、贈与者若しくは受贈者が認知症であるなど、意思能力に問題がある場合も、贈与を否認されることがあります。このため、送金した当初の被相続人及び送金を受けた親族の健康状態などにも着目する必要があります。

名義預金の認定は厳しい

送金があったことを知らない場合など、贈与が成立していないとされる場合には、送金した現金は被相続人の名義預金として相続税が課税されることになります。名義預金については、その預金を管理したり運営したりしている者が被相続人であるかどうかも問題になります。しかし、夫婦間の名義預金の認定について、妻が夫の財産を管理運用することは不自然でないため、妻が妻名義の預金を管理運用していても、それだけで妻名義の預金が被相続人である夫の名義預金にならないとまでは言えない、とした判断があります。これを見る限り、少なくとも夫婦間の贈与については、贈与と言えるだけのきちんとした証拠を残しておく必要があると言えます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。税務調査で望ましい結果を得るための法律論・交渉術に関する無料メルマガを提供中。

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