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「短期前払費用」の要件の中で税理士もついつい忘れがちな落とし穴とは?

法人税の節税として、真っ先に思いつくものは短期前払費用です。短期前払費用の適用を受けると、支出時から1年分が法人の経費となる訳ですが、短期前払費用については、以下の要件を満たす費用である必要があります。

短期前払費用の5要件とは?

下記の要件は非常に有名ですが、税理士でもよく忘れる要件として、上記の5があります

1 一定の契約に基づいて支出するものであること
2 継続的に役務提供を受けるために支出するものであること
3 等質等量のサービスに係るものであること
4 法人にとって重要なものでないこと
5 収益と対応させるものでないこと

「収益と対応させる」とは?

法人税の取扱いとして、売上と原価を対応させる、という原則があります。典型例は、商品売上と商品仕入れで、会社の経理上は、売れた商品に対応する仕入しか、経費とすることはできません。

この取扱いは経理の常識ですが、経理上はこのような取扱いはメインの売上に関してのみ行うことが多いです。しかし、法人税の取扱いでは、メインの売上に関するものかどうかを問わず、あらゆる収益とその原価を対応させるべき、という取扱いになっています。

このため、製品を売る製造業の会社が、サイドビジネスとして借金をして他人にお金を貸す貸金業を行った場合、借金の支払利息とお金を貸した他人から収入する受取利息は売上と原価の関係にありますから、たとえ金額が小さかったとしても、個別に対応させる必要があります。

個別対応は短期前払費用の対象外

上記の通り、個別の対応が必要となる経費については、短期前払費用の対象にはなりません。通常、借金の支払利息は短期前払費用となりますが、上記のような受取利息と対応する場合には、短期前払費用とすることができません。

支払利息は短期前払費用でいい、メインの売上についてのみ原価と個別対応させればいい、といった単純なミスが実務ではかなり多くありますので、注意する必要があります。

サブリース料も多い誤り

その他、誤りが多いものとして、サブリースがあります。サブリースは、他人から借りた物件を別の他人に転貸するものですので、支払賃料と受取賃料が両方とも発生します。受取賃料に対応する支払賃料は原価になりますから、短期前払費用の対象にはなりません。

サブリースについては、個人で買った物件を同族法人で借り上げて他人に貸す、という節税が多く見られますので、注意してください。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。

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