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適正な税務申告をしているかどうかで3つの法人に分類される「実況区分」とは

税務署のシステム上、法人を実況区分によって管理しています。この実況区分ですが、法人はすべて「第1グループ」「第2グループ」「第3グループ」の3つに区分しています。

国税の資料を見ると、第1グループは、適正な申告を継続している法人をいい、このような法人は悪質な不正計算が想定される場合などを除き、実地調査は行われないとされているようです。一方、第3グループとは、不正計算を行う常習犯や実地調査で不正が発見されなかったが多額の申告もれが想定される不審な会社などが該当するようで、今後も深度ある調査が実施されるとされているようです。

なお、第1グループにも第3グループにも該当しない法人が第2グループで、いわば中間の法人と言えます。

実務の取扱い

以上を踏まえると、税務調査の深度は会社の実況区分によって異なることになります。このため、どういう場合に会社の実況区分が悪化するのか、質問を受けますが、私の経験を申し上げますと、税務調査を受ければ原則として第3グループになるものの、第3グループになったからと言って、税務調査が著しく厳しくなることは基本的にはありませんでした。この理由は簡単で、調査官は実況区分にそれほど関心を払わないからです。

実況区分というくらいですから、国税のマニュアル上は、細かく実況区分を変更する基準が定められていますが、そのマニュアルの内容は、膨大すぎて調査官はもちろん、その上司にあたる統括官もほとんど見ていません。このため、どんな場合に実況区分を変更すべきなのか、調査官は基本的には知らないのです。

実際のところ、現職時代上司からは、「100点満点でない限り、第3グループに該当する」と指導されました。しかし、「多額の申告もれ」がある場合に第3グループなので、この指導は間違っていると考えられます。

反対に、100点満点に近い申告をした会社について、第3グループのまま放置していても、上司から注意を受けたことはありません。

変えたくないのが調査官の審理

このあたり、調査官の心理を考えるとよく分かります。調査したとは言っても、会社のすべてを把握できている訳ではありません。このため、実況区分を上位にしてしまい、調査の頻度を減らしたとすると、後日不正が見つかった場合、実況区分を変更したことについて責任問題になる可能性があります。こんな責任取りたくありませんから、悪い区分にしておこう、という人情が働くわけです。

こうならないよう、きちんと上司がチェックしなければなりませんが、それができないのが国税組織の常識なのです。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。

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