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税務調査で録音が認められていないことと国家賠償請求の関係を元国税が解説

公務員の不法な行為により、損害を被ることがありますが、このような場合に考慮したい制度として、国家賠償請求があります。これは民法上の不法行為に係る損害賠償の公的機関版とも言える制度です。

国家賠償請求を行うためには、公務員の不法行為があってから、原則として3年以内に請求を行う必要があります。

国家賠償請求の要件

国家賠償請求には、以下の要件があると言われています。

(1) 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が行った行為に対するものであること(公権力性)
(2) 対象となるのは、公務員の職務行為であること(職務関連性)
(3) (2)の公務員の職務行為について、違法性があること(違法性)
(4) 公務員に故意又は過失があること(故意・過失)
(5) 被害者に損害が発生したこと(損害の発生)
(6) 公務員の行為と損害との間に因果関係が存在すること(因果関係)

ここでいう違法性ですが、国税の内規を見ると、税務調査については必要性の判断や方法に税務職員の職務上の行為としての合理性があり、かつ社会通念上相当の範囲内で行われたのであれば、違法とはいえないとし、結果として調査官が合理的な判断の元に職務上必要な調査を真摯に行っている限りは、何も問題ないと解説されています。

ただし、合理的な判断を行っているか、社会通念上相当の範囲かどうか、ここは見解が分かれるところですから、税務調査上何か疑義が生じたら、即調査官やその上司である統括官の見解を聞くこととして下さい。

録音禁止では立証できないが

ところで、国家賠償請求をしてもなかなか裁判では認められません。この理由として、上記の(1)〜(6)のすべての要件について、被害を受けた納税者に立証責任があるとされているからです。

このため、記録が重要になる訳ですが、国税には税法に詳しい職員がほとんどいないため、納税者に対して相当多くかつ悪質な誤指導を行っているにもかかわらず、国家賠償請求の対象にならないよう、税務調査において録音を禁止するなどして、リスクヘッジをしています。こうなると、客観的な証明ができませんので、国家賠償請求をしても、立証責任のハードルが高く負けてしまうことがほとんどなのです。

こういうことを踏まえても、税務調査の録音を許可するなど、寛大な対応を国税は行うべきと考えています。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。

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