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【留置き】税務調査で資料を預かりたいと言われたらどうすべきか元調査官が解説

税務調査においては、国税職員に帳簿などの資料を見せたり、事業に関係する事項についてのヒアリングに回答したり、ビジネスに関係する必要な資料を提出したりする義務があるとされています。仮に、この義務に違反すれば罰則の対象になりますので、断ることはできません。

しかし、これに関連して誤解が多いことの一つに留置きという制度があります。留置きとは会社の資料について、国税職員が税務調査で必要な場合その資料を預かることをいいます。留置きは、調査をする事項が多い場合や、コピーすべき資料が多い場合、そして無申告の法人で領収書などが多数ある場合などに行われます。

提出と留置きは同じ?

ここで誤解が多い事項は、資料を国税に提出する義務があるため、資料を提出して預からせる留置きについても、それを認める義務があると考えることです。この点、法律を読めば分かりますが、罰則の対象から留置きは除かれていますので、留置きは拒否することができます。

そもそも、日本語としても提出と留置きは異なるものでしょう。一例を挙げると、自分が持っている本の必要部分を相手にコピーして渡す行為(提出)と、持っている本を相手に貸す行為(留置き)は全く異なります。このような明確な相違があるのに、断れないなどと説明する専門家がいますので困ります。

実際のところ、国税の通達をみますと、「「留置き」とは職員が提出を受けた物件について税務署などの庁舎において占有する状態をいう」としており、留置きと提出を別次元でとらえていることが分かります。

留置きは制限が大きい

加えて、国税としても留置きは強制できるようなものではありませんので、納税者に配慮した取扱いを行っています。大原則として、調査のために必要がある場合に限り、納税者の承諾を得て留め置くものであり、承諾がない場合に強制的に留め置くことはないと説明されています。

このような事情がありますので、留め置いた資料について、国税に返還を求めた場合、それを国税が拒否する場合には国税不服審判所に審査請求ができるとされています。審査請求は国税の行う処分に不服がある場合にできるもので、納税者の権利保護のための制度ですから、留置くということはそれだけ強権性が大きいものなのです。なお、国税は留め置いた物件の管理や返還には相当に気を遣っています。

このため、留置きは断れるのであり、断る場合には堂々と断りましょう。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は税理士向けのコンサルティングを中心に118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開するとともに、法律論や交渉術に関する無料メルマガを配信中。

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