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「自分で申告するので源泉徴収(天引き)しないでください」は間違っている

お給料や税理士への報酬を支払う際、会社は所得税を天引きする必要があります。この天引きを源泉徴収といいますが、源泉徴収に関して多くの企業が誤解しているのは、源泉徴収を失念して支払った場合の取扱いです。源泉徴収はあくまでも支払先の所得税を天引きしているものですから、天引きせずに支払ってしまったとしても、支払先が天引き前の支払金額を収入金額として申告すれば、国が徴収できる税金は変わらないため問題ない。このように考える方が多くいます。

責任は支払先に存在する

しかしながら、源泉徴収は天引きする支払者(源泉徴収義務者)と、天引きした税金を納める国との手続きであり、支払いを受ける者は関係ないと言われます。このため、仮に天引きを忘れた支払先が申告しなかった場合はもちろん、支払先が申告をしていたとしても、天引きを忘れた所得税については支払者である会社が納税しなければならないのです。

とりわけ、自分で申告するため天引きをしないで下さい、などという支払先もいるかも知れませんが、天引きをしなかった責任は支払者にありますから、源泉徴収の対象になるものであれば、確実に天引きをする必要があります。

会社に責任があるため

結果として、源泉徴収の責任は会社にあることから、会社が天引きを忘れれば、会社に対して不納付加算税というペナルティーがかかることになります。加えて、遅延の利息に相当する延滞税の対象にもなるため、注意が必要です。

何より問題になるのは、天引きを忘れた所得税を税務調査なので追徴された場合、所得税分過大に支払っている支払先から、本来天引きすべき税金を回収しなければならないことです。従業員や問題なく回収できる支払先であれば問題ありませんが、中には雲隠れする支払先などもいる訳で、処理には注意したいところです。

なお、仮に天引きを忘れた所得税の回収ができず、その回収を放棄した場合には、追加で報酬を支払ったという処理がなされる可能性があります。

非居住者宛は特に注意

特に、非居住者に対して源泉徴収の対象となる所得の支払いをする場合、この問題はより大きくなります。非居住者に対する源泉所得税の税率は20%(復興税を除きます)と居住者よりも大きいですし、かつ国外に居住する非居住者からの回収は国内の支払先に比べてはるかに大変です。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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