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国税から狙われている不動産転売時の消費税 国税は見解をどう変えたか

近年、収益不動産を購入して投資家に転売する不動産販売業者の消費税について、国税の課税処分が相次いでいます。この背景には、居住用賃料が発生する収益不動産に関する仕入税額控除の区分について、国税が見解を変えたことがあります。

仕入税額控除の意義と問題点

仕入税額控除とは、消費税の申告において、事業者が取引先に支払った消費税について経費とする処理を言います。消費税の計算においては、原則として、売上が3000万円(消費税は240万円)、仕入が2500万円(消費税は200万円)の場合、差額の40万円が納付する消費税となります。この経費に当たる消費税の控除が仕入税額控除なのです。

仕入税額控除については、必ずしも常に支払った消費税の全額を経費とできる訳ではなく、以下のいずれの場合には控除できる消費税の制限が必要になります。

1 課税売上割合(全売上に対する消費税が課税される売上の割合)が95%未満である場合
2 消費税が課税される売上が年5億円を超える場合

上記のような不動産販売業者については、売上が5億円を超えることも多いですし、それ以上に消費税が課税されない土地の売上が大部分を占めるため、この制限が発動することが多くあります。

問題となる制限の内容

ここで問題になる制限ですが、原則として、消費税が課税されない売上に対応するものはその全額、消費税が課税される売上と消費税が課税されない売上のいずれにも対応するものは一定割合を乗じた金額について、仕入税額控除の対象にならないというものです。ここで問題になるのは、上記の販売業者が購入して投資家に転売する収益不動産は、中古の居住用マンションが多いということです。

中古の物件ですのですでに入居者がいますから、仕入れて販売するまでに家賃が発生します。この家賃は居住用ですから、消費税は課税されません。結果として、この仕入れは、消費税が課税されるマンションと、消費税が課税されない家賃の両方に対応するため、仕入税額控除が制限されるという結論になります。

国税の見解の変更

従来、国税は多少家賃が発生しても、最終的にはマンションを売るためその家賃には目をつぶってマンションの消費税の全額について仕入税額控除を認めていました。しかし、その見解を変更して、どんどん課税しているようですから注意が必要です。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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