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消費税が非課税となる福祉車両を活用した課税逃れの悪用とは

普通の車に車いす用の昇降装置をつけたり、手でアクセルやブレーキを操作できる手動装置をつけたりするような、身体に障害がある方向けに一般車を改造した車両を福祉車両と言います。このような福祉車両は、消費税法上身体障害者物品に含まれるとされています。身体障害者物品は消費税が非課税とされていますので、福祉車両には消費税がオンされません。

福祉車両の問題

数年前から、この福祉車両を使った消費税逃れがあると言われていました。具体的には、例えば税抜1千万円の車を販売する場合を考えてみましょう。この車を通常販売すれば、消費税が80万円かかり、1,080万円となりますが、仮にその車を10万円かけて福祉車両に改造すれば、1,010万円で販売することができます。こうなると、買う側からすれば70万円もディスカウントできる訳で、大きなメリットがあります。

一方で、国税から見れば、本来80万円の税収を得られる取引について、それがゼロになる訳ですから面白い訳がなく、結果としてこのような取引を規制するための税制改正を要望しています。

課税逃れか

ただし、この取引を売手から見た場合、国税が指摘するように必ずしも消費税の課税逃れと言う訳ではないことが分かります。と言いますのも、非課税の売上を作るために支出した経費は、原則として消費税において経費としてカウントされないからです。

先の例で、例えば車両を税抜700万円(消費税は56万円)で購入してそのまま売却した場合、消費税は差額の24万円(=80万円-56万円)となります。一方で、それを10万円かけて改造すると、消費税の納税は出ませんが、車両を購入するために支払った56万円は原則として経費としてカウントされませんので、その分余計に取引先にお金を払ったことになります。こうなると、消費税は減ったけれどもコストはむしろ増額していますから、それを取り上げて課税逃れというのは難しいでしょう。

正確には悪用

ただし、このようなスキームが問題になるのは、先のような理屈が通用しない例外が消費税法にはあるからです。この例外を使えば、本来経費にならない56万円の消費税について、その一部又は大部分を経費とすることもできます。消費税にはこのような欠陥がありますので、早期の見直しが必要と言えます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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