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税務調査の通知を納税者と税理士のどちらに先にすべきか法律と趣旨から考える

税務署が納税者に対し、税務調査の実施の連絡(事前通知)をする際、現状は納税者ではなく原則として税理士に連絡をすることになっています。原則として、と申しましたが、その理由は税理士に通知をして欲しい旨を予め届け出る必要があるからです。この届出がなければ、税理士ではなく会社に税務署から連絡が行きます。

なお、この届出の方法ですが、税務代理権限証書という用紙の中の、「調査の通知に関する同意」という項目のチェック欄にチェックを入れて税務署に提出することになります。

歴史を振り返ると

ところで、このような取扱いは平成26年度の税制改正で設けられたものです。従来は、税理士ではなく納税者に事前通知をすることになっていました。しかし、こうなると、専門知識がない納税者では十分な聴き取りができなかったり、税理士との日程調整がうまくいかなかったりする問題が生じていました。

このような問題を踏まえ、上記の届出をしている場合には、納税者ではなく税理士に事前通知をすることとされたのです。

法律の文言は?

しかしながら、現状上記の届出を出しているにもかかわらず、納税者に対して事前通知の連絡が行く、といった事態が生じ、国税とトラブルになる場合があると言われています。この点、条文を読むと「(届出があれば)税理士に対してすれば足りる。」とされており、税理士に先に連絡をしなければならないとはされていません。結果として、泣き寝入りするより他にない、といった説明をする専門家もいます。

一方、趣旨では?

しかしながら、条文ではなく趣旨を読むと、以下のような解説がありますので、当然の税理士に先に通知しなければならないと考えられます。

・ 納税者の同意が明確な時まで納税者に通知をするとなると、円滑な税務調査という観点から望ましくないこと
・ 納税者の利便向上につながること

このような趣旨があるのであれば、納税者に連絡すること自体、問題があると考えられます。

趣旨解釈も当然踏まえるべき

このような趣旨解釈も、法令の解釈には当然必要な姿勢であり、裁判でもよく取り上げられます。趣旨解釈もできない調査官や専門家が法律を文字通りにしか解釈できないため困るのですが、問題が生じたときは、上記の趣旨を踏まえた上で、権威ある職員に抗議するなどしましょう。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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