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長期間にわたる大規模工事における法人税や消費税の取扱を税理士が解説

税務上、長期大規模工事という工事については、工事進行基準によって収益を計上する必要があるとされています。長期大規模工事とは、以下の要件を満たす工事を言います。

(1)着手から完成引渡し日までの期間が1年以上であること。
(2)請負金額が10億円以上であること。
(3)工事契約で、請負の対価の額の二分の一以上が当該工事の目的物の引渡しの期日から一年を経過する日後に支払われることが定められていないものであること。

工事進行基準に照らし合わせて計上

工事は民法の請負契約に該当しますので、その報酬は工事が全部完成してからもらえるのが通例です。このため、本来的には工事が完了した段階で報酬の全額を売上に計上し、原価も同様に全額計上すればいいのですが、そうなると上記のような工事については、売上や原価に計上されるまでの時間が非常に長くなります。このため、このような工事については、工事進行基準という基準に基づき、完成前にその一部の金額を売上・原価に計上することになっています。

工事進行基準とは

工事進行基準とは、その名の通り、工事の進行の度合いに応じてその工事の収益や原価を計上する方法をいいます。この進行の度合いですが、発生した原価の額など合理的と認められる方法により算定した割合(進行割合)によって計算することになります。

具体的には、例えば当期に受注した工事の報酬総額が1000億円で、原価が700億円発生すると見込まれている場合、当期中に70億円の原価を支出したとすれば、進行割合は10%ですので、報酬総額1000億円の10%、100億円を当期の収益として計上することになります。

長期大規模工事以外の工事については

税務上長期大規模工事の要件を満たさない工事についても、法人税では工事進行基準を選択することができます。しかし、工事進行基準はかなり手間がかかる処理ですので、それを適用する会社は少なく、ほとんどの場合工事の完成引渡しを待って工事の収益と費用を計上しています(工事完成基準)。

工事完成基準の場合、処理は工事進行基準ほど難しくはありませんが、完成引渡しまで原価を計上してはいけませんので、処理をミスしないよう注意する必要があります。

消費税の取扱い

消費税についても、工事進行基準を適用することができますが、法人税の取扱いとは異なり、長期大規模工事であっても、工事進行基準の適用は強制されません。あくまでも任意に選択できる規定となっています。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

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