HOME > 法律コラム > 消費税増税の経過措置の全体像とそれに対する注意点を税理士が解説(1)
周知の通り、平成31年10月より消費税が10%に増税される予定です。急きょ撤回するという可能性もゼロではありませんので、どうなるかまだわからないですが、10%に増税されることを前提に対策を取っておく必要があります。
とりわけ、スケジュール通りに行けば、平成31年3月までの一定の取引などについて、消費税法の経過措置により、増税後も8%という現在の税率とされる取引がありますので、この点も押さえておく必要があります。
消費税法の経過措置で、増税後も8%とされる取引については、以下の国税庁のリーフレット(PDF)に記載がありますので参考にしてください。本コラムでは、これらの取引のうち、実務上よく問題になる請負工事等と資産の貸付けについて捕捉します。
工事の請負等のうち、以下の要件を満たす取引について、消費税の経過措置の対象になります。
1 平成31年3月末日までに契約がなされ、平成31年10月1日以後に引渡しがなされること
2 工事の請負や製造の請負、そして測量やソフトウエアの開発などの一定の請負などで、仕事の完成に長期間を要するなど一定の要件を満たす取引であること
このような取引は、通常完成引渡しに長期間を要するため、意図せずに増税日を超えてしまうことがあり得ます。となると、8%で請け負うことで合意していたのに、結果として10%を超える取引となってしまうリスクがありますので、平成31年3月までに契約をしたものであれば、8%でいいという特例が設けられているのです。
ただし、このような取扱いはあくまでも特例ですので、8%のままでOKなのは、平成31年3月までの契約において合意している金額に限られるとされています。このため、例えば税抜き1,000万円の請負契約で合意していたにもかかわらず、それが1,200万円に増額されたのであれば、8%となるのは1,000万円までであり、差額の200万円については、10%の消費税が課税されます。
一方で、仮に請負金額が減額されたのであれば、その全額について8%で問題ないとされています。
なお、この取扱いは当初合意した金額について増減した場合の取扱いですので、仮に増額の理由が、追加工事など当初の工事契約において定められていなかった場合には、このようには取り扱われず、その追加工事ごとに経過措置が適用されるかどうか判断することになります。
元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。
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