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国外の売上に対する消費税の仕入税額控除について税理士が解説

日本で商品を売れば、当然のことながら消費税が課税されますが、同じ商品でも、国外でそれを売れば消費税は課税されません。この理由は、法律は各国がそれぞれで決めるべきものですので、日本の法律を国外で適用することができないからです。同様に、ヨーロッパの付加価値税は日本では課税されていません。

これに関し、よく質問を受けることの一つに、国外の売上に対応する経費に対して課される消費税の取扱いがあります。上記の例で言えば、国外で売った商品の仕入れを日本で行った場合、その仕入れに対しては消費税が課税されますが、この消費税を消費税の計算上控除できるかが問題になります。

仕入税額控除という仕組み

消費税の計算上、売上に対応する経費に対して課税される消費税を控除できますが、先の通り国外の売上に対しては、消費税が課税されませんので、それに対応する経費も控除できないのではないか。このような疑義が生じます。

実際のところ、医業に関しては、これと似た問題が生じています。医業の売上は、消費税が課税されない保険診療と課税される自由診療からなりますが、保険診療に関する経費については、消費税の控除が制限されています。売上に対し消費税が課税されない以上、経費も認めない。このような仕組みとなっているのです。

国外売上に対応するものは控除できる

しかし、医業とは異なり、国外売上に対応する経費に対する消費税は、消費税の計算上全額控除することができます。この理由は、国外では日本の消費税が課税されないだけで、その国では、消費税に類似したその国の税金が課税されるからです。

ヨーロッパを例にとり解説しますが、ヨーロッパで商品を売ればヨーロッパの付加価値税が課税される反面、日本で仕入れた商品はヨーロッパの付加価値税は課税されていませんので、売上に対する付加価値税だけをヨーロッパに収めなければならないことになります。こうなると、納税者にとっては極めて不利になりますから、日本の消費税から控除できるようにしているのです。

これだけ聞くと、日本では控除が認められて消費税の税収が減り、ヨーロッパでは付加価値税の収入が増えると思われるかも知れませんが、逆のケース、すなわちヨーロッパで商品を買って日本で売る場合には、日本の消費税は課税される反面、原則として付加価値税の控除が認められます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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