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金の密輸が減らないことを背景にした金地金の課税仕入れの厳格化について解説

2019年度改正においては、金地金などに対する消費税の取扱いが厳格化されることになりました。具体的には、以下の改正が実現します。

1 密輸品と知りながら金などを購入した場合、その金などに課税される消費税の控除ができないこととされます。
2 金又は白金の地金を購入した場合、帳簿への記載や請求書の保存に加え、本人確認書類の写しの保存がなければ、その地金に課税される消費税の控除ができないこととされます。

改正の適用関係ですが、上記1の改正は2019年4月1日以後に国内において事業者が購入する場合について、上記2の改正は同年10月1日以後に国内において事業者が購入する場合について、それぞれ適用されます。

止まることを知らない密輸が背景

このような改正が行われるのは、金の密輸が減らないからです。金を密輸して日本で売れば、消費税だけ儲かると言われています。具体的に申し上げると、金に対しては消費税などの税金が課税されない国がほとんどです。一方で、日本では金に対して消費税が課税されますから、金を日本で売る場合、消費税分上乗せで売ることができます。となると、密輸した金に対する消費税は納めず、売上の消費税について懐に入れることが可能になります。10%の消費税増税が控えていることもあって、このような制度の悪用については厳しく取り締まらなければならないということで、このような改正が実現しています。

密輸の取り締まりは本来税関

ところで、本来このような密輸を取り締まるのは税関の仕事です。もっと言ってしまえば、輸入品については、原則として入国の際に消費税を納めなければなりません。このため、仮に金に対し、消費税のような税金が課税されない国で金を購入しても、税関がきちんと消費税を徴収すれば、上記のような、売上の消費税だけ丸儲けになるといった事態は生じようがありません。

このため、本来は税関がもっとしっかり仕事をするような制度を設けるべきなのですが、この改正は密輸した金を買った業者に責任を負わせる制度ですから、ある意味筋違いな改正となっています。

購入の際は要注意

とは言え、改正が実現する以上はそれに従わなければなりません。このため、事業上金地金を購入する場合には、本人確認書類などをきちんともらうよう、業務フローを見直して慎重に対応する必要があります。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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