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過大な役員報酬とならないよう押さえておきたい倍半基準を元国税の税理士が解説

会社がその役員に過大な役員報酬を支払った場合、その過大な金額は経費として認めない、過大役員報酬の取扱いが法人税法上設けられています。ここで問題になるのは、何をもって「過大」と判断するか、その根拠です。法令上、この判断基準として、以下が挙げられています。

役員報酬が過大かどうかの判断基準

(1)その役員の職務の内容
(2)その会社の収益状況や、その会社の使用人に対する給与の支給状況
(3)その内国法人と同種の事業を営み、かつ事業の規模が類似する会社が、その会社の役員に対して支給する給与の支給状況

これらの基準のうち、とりわけ重要なのは(3)です。過大役員報酬として法人税を課税する場合には、必ずこの(3)の基準、すなわち同業他社との比較を国税はしなければならないとされています

同業他社は倍半基準で選ぶ

ここで問題になるのは、同業他社を選ぶ基準です。業種はおおむね絞れるにしても、どのくらいの規模であれば、比較対象となるのか、明確な基準は法令上ありません。この点、実務においては倍半基準で判断するのが一般的です。

倍半基準とは、文字通り、会社規模を表す売上金額などの指標のうち、2倍以下0.5倍以上の範囲の法人を比較対象の法人として抽出する基準をいいます。この基準ですが、税務署的には非常によく使われており、帳簿などを全く保存していない納税者に対し、大まかな所得金額を推計してそれで税金を課税する推計課税を行う場合なども利用されています、

この倍半基準ですが、先に述べた通り比較対象者を選ぶための基準です。とある自称税務調査の専門税理士が、対前期比で2倍から0.5倍までの報酬であれば過大役員報酬にならない、といった誤った情報を流していますので、誤解することのないよう注意してください。

倍半基準でやられたとしても

税務調査では、この倍半基準に照らして、だいたい同業他社がこのくらいの報酬だからあなたの報酬は高すぎる、といった指導がなされます。ここで重要なのは、倍半基準という基準があるにしても、同業他社のデータを税理士や納税者は知りようがないということです。このため、自分の報酬が過大であるかどうか、知りようがありません。

にもかかわらず、このような基準で課税される場合もある訳で、非常に酷な状況です。このあたり、きちんとした情報提供が国税から必要と考えられます。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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