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未払い残業代を支払う会社と受取る個人のそれぞれの税務上の取扱いを解説

いわゆるブラック企業など、残業代を支給しない会社に対して、後日その元従業員が未払残業代を請求することがあります。裁判などを起こして、この未払残業代を会社が支払わなければならないことがありますが、この場合の税務は支払う会社の法人税と、それを受け取る元従業員個人の所得税とで、大きな違いがあります。

支払う側は合意時点で経費

まず、支払う会社側ですが、こちらは未払残業代を支払う会社と従業員が、合意したタイミングで支払うべき未払残業代を経費にすることになります。法人税の経費は、債務確定基準と言われる基準により、債務確定のタイミングで経費にすることとされています。債務確定、すなわち従業員に未払残業代を支払うことが確定するタイミングは、両者が合意したタイミングとなりますので、そのタイミングで経費にすることとされています。

受け取る側は支払期日で収益

一方で、受け取る元従業員は、未払残業代の支払いを受けるべきであった支払期日において収入金額として認識することになります。例えば、末締め翌月5日払いの給与については、12月に締日が来る給与については、1月5日の収入金額として認識することになります。このため、未払残業代については、例えばそれが2016年12月締めの労働に関するものであれば2017年1月の収入金額として認識することになります。

結果として、過去にさかのぼって修正が必要になりますから、修正申告をするなどの対応が必要になります。

法人税は原則さかのぼって修正しない

法人税は合意時点、所得税は支払うべき期日と、経費と収益のタイミングが大きく異なることになりますが、この理由は事業に関する損失については、原則として過去にさかのぼって修正をしないというルールがあるからです。

本来、過去に経費とするべきものであれば、その時点にさかのぼって修正をする必要があると考えられますが、法人税は古い企業会計を前提として作られています。古い企業会計においては、決算のやり直しなどを原則として認めていなかったため、このルールに照らして、経費については過去に遡った修正は認められないというスタンスをとっているのです。

専門家プロフィール

元国税調査官の税理士 松嶋洋
東京大学を卒業後、国民生活金融公庫を経て東京国税局に入局。国税調査官として、法人税調査・審理事務を担当。現在は118ページにも及ぶ税務調査対策術を無料で公開し、税理士を対象としたコンサルティング業を展開。

※注意事項:記載については、著者の個人的見解であり正確性を保証するものではありません。本コラムのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、著者は賠償責任を負いません。加えて、今後の税制改正等により、内容の全部または一部の見直しがありうる点にご注意ください。

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