HOME > 法律コラム > 妊婦が交通事故に遭い流産!二度と子供が産めない体になったら加害者はどんな法的責任を負う?
モーニング(講談社)にて大好評連載中の「コウノドリ」が、10月からTBS系にてTVドラマ化されることが決定した。
「コウノドリ」は、産婦人科医の奮闘を通じて、リアルな医療現場が描かれており、累計部数100万部を超えるヒット作となっている。
本コラムでも、妊婦が交通事故に遭った場合の、加害者の法的責任についていくつか触れてきたが、そもそも妊婦が交通事故に遭うと、その時期によって胎児への影響は異なると言われている。
「コウノドリ」の作中でも頻繁に取り上げられる切迫早産は、妊娠初期での交通事故ならば、可能性は高くないと言われている。しかし中期以降となると、その可能性は格段に上がる。
もしも交通事故に遭ったら、自分の身体以上に、お腹の中の子供が気になるだろうが、それと同時に加害者に対しても様々な思いが出てきて当然だろう。
さて今回は交通事故が原因で、二度と子供が産めない体になってしまった場合の加害者の法的責任ついて井上義之弁護士に伺った。
加害者が負うべき法的責任は、主に「民事」と「刑事」に分類される。ではまず刑事からどんな罪になるのか伺った。
「加害者が過失により交通事故を起こした場合、女性を被害者とする自動車運転過失致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第5条)が成立すると考えられます。自動車運転過失致死傷罪にいう「人」には母体から一部露出する前の胎児は含まれませんので、胎児を被害者とした自動車運転過失致死罪は成立しません」(井上義之弁護士)
胎児は「人」には含まれないとのこと。ちなみに自動車運転過失致傷罪は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金である。では子供が産めない身体になってしまったことに対しての責任はどうなるのだろうか。
「子供が産めない身体になってしまったとしても成立する犯罪は同じであり、その点は量刑事情として考慮されることになります」(井上義之弁護士)
では民事上の責任はどうだろうか。
「加害者は、直接の被害者である女性との関係で損害賠償責任を負います」(井上義之弁護士)
子供が産めない身体になったことに対する、責任はどうなるのだろうか。
「交通事故により子供が産めない身体になってしまったことは、後遺障害の一態様として、損害額の算定の際に考慮されることになります」(井上義之弁護士)
交通事故によって被った後遺障害は、その症状や程度によって損害賠償金額が算定されることが多いことをご存知だろうか。(後遺障害等級)
つまり、子供が産めない体になったことも、後遺障害の一つとして考慮されるということである。
「コウノドリ」でも、妊婦が交通事故に遭う話を取り上げているが、そこでは加害者には一切触れていない。また当然ではあるが、弁護士も登場しない。
自分がいくら注意していたとしても、交通事故を防ぐことは出来ない。もしも交通事故に遭ったら、すぐ病院に連絡するとともに、警察や弁護士に連絡することも忘れないでいただきたい。
尚、過去に交通事故によって生まれてきた子供が障がい児だった場合の加害者の責任ついても触れているので、興味がある方は是非ご覧になっていただきたい。