HOME > 法律コラム > 「親権喪失 親権停止 管理権喪失」ーーそれぞれの違いを弁護士が解説!
前回、親権喪失がどのような制度かについて触れた。
話を伺った木川雅博弁護士は「親権の喪失とは、その名のとおり包括的に親権を失わせるもので、お子さんの身上監護権と財産管理権の両方を失わせることになります」と述べていた。簡単に言うと、親が親であることを認められた法律上の権利「親権」を失う、つまり法律上「親でなくなる」ということだった。
そして今回は親権に対して与えられる他の制限「親権停止」と「管理権喪失」について話を伺った。
「親権喪失の制度が期間制限なく親権を失わせるものであるのに対し、親権停止は、2年を超えない範囲で一時的に親権を失わせる制度になっています」(木川雅博弁護士)
一度、親権喪失の審判がくだされると、親権喪失の原因となった親権者の行為が改められたと認められない限りは半永久的に回復することはないが、親権停止はその期間を2年としているとのこと。
「また、親権喪失は、虐待または悪意の遺棄、その他父母による親権の行使が『著しく』困難または不適当であって『著しく』子の利益を害するときに認められますが、親権停止の場合は、親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときに認められるとされており、お子さんに対する虐待や親権の濫用の程度により、両制度が使い分けられています」(木川雅博弁護士)
2年という期間だけでなく、親権者の行為の程度によっても、親権喪失か親権停止かで区別されているということだろう。
「一方、管理権喪失とは、親権のうちの財産管理権のみを失わせるものです。したがって、お子さんが受け取るべき生命保険金を自分の借金返済に充てたりする等、お子さんの財産を不適切に管理し、危険にさらしたときに管理権喪失が認められます」(木川雅博弁護士)
なるほど。子供が本来受け取るべき財産を、親が不正に受け取った場合に財産管理権を喪失させることが可能とのこと。しかし、それも程度によってはより重い親権喪失、親権停止になる可能性があると木川雅博弁護士は話す。
「もちろん、財産管理権の行使が著しく不適当でお子さんの財産を失わせる危険が高いときは、親権喪失や親権停止の制度を用いることも可能です。事案によって、両親の財産管理権のみを失わせれば足りるか、それとも身上監護権まで喪失・停止させなければならないかによって使い分けができるでしょう。なお、破産法では両親に破産手続が開始された場合はお子さんの財産管理権が喪失すると定められていますが、実際には財産管理権の喪失手続が取られることはないようです」(木川雅博弁護士)
10月1日から改正児童福祉法が施行された。それに対して静岡県は弁護士と連携を強化する方針とのこと。担当者は「親権停止などが検討される難しいケースでも迅速、的確に対応し、子どもの安全と権利を守っていきたい」と話している。
また2015年度に対応した児童虐待件数が2205件と過去最多となった事を背景に「法的に複雑なケースが増えている」、「的確、迅速な判断につながる上、児相職員の法的対応の事務量が軽減され、ほかの児童虐待事案に振り向けることができる」とも話していた。
改正された児童福祉法では児童相談所への弁護士の配置などが義務付けられている。もしも児童虐待を発見した場合は、最寄りの児童相談所にすることをおすすめする。