HOME > 法律コラム > 税制いたちごっこは立法能力の低下が原因!しかし強行課税は今後ますます増加?!
最近、税理士の中で大きな話題となっているのは、前回のトステムの事例や、合理性のないM&Aを行って税逃れをしたと国税が判断した、ヤフーの事例など、従来は考え難かった課税処分が増えていることです。これらの課税処分は、法律的には問題がなくても、国税がやりすぎと判断した節税を否認できる、という規定に基づいて行われたものですが、この規定はその内容が税理士でもよく分からないことがあって、近年はあまり使われませんでした。しかし、それが最近は増えているのです。
これだけ聞くと、国税が最近は非常に高圧的になったとお考えの方も多いと思いますが、このような処分が増えた理由はそれだけではありません。
税制はいたちごっこと言われます。課税するルールを国が決めた場合、納税者は税負担を考えてそのルールを逃れるスキームを考えるところ、更に国はそのスキームを否認するためのルールを決めます。いたちごっことは、無益な繰り返しをいうところ、このような納税者と国の節税を巡る税の現実を皮肉ってこのように言われるのです。
いたちごっこが成り立つには、国が節税しようとする納税者のスキームを適切に否認できるよう、適宜必要な法律を作る必要がありますが、近年はこのようなスキームを考える納税者が多すぎて、法律を作る作業が間に合わない、という現実があります。
その他、法律を作る側の能力が低下していることが指摘されています。来年度の税制改正で、電子商取引に係る消費税の取扱いが改正されますが、電子商取引の消費税については、外国企業が日本企業に比して相当有利な取扱いになっていました。
この問題は数年前から放置できない不公平といわれていたにもかかわらず、なかなか税制改正が実現しませんでした。その理由は、電子商取引の取扱いが非常に複雑なため、法律を作る側で適切な法律を作ることが困難だったからです。結果として、今まで相当の消費税の課税もれや不公平が放置されたと言われています。
法律を作れない以上、その不利益は国が負うべきですが、国税組織はこのように考えていません。昔から今まで、節税する納税者が悪いという理屈で動いています。強行的な課税処分は今後も増えると見込まれますので、税務調査できちんと交渉し、納得できないことがあればどこまでも戦うという姿勢が今後ますます必要になるでしょう。