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信号無視をした大人を真似て子供が交通事故死。運転手は信号無視をした大人を訴えることは可能?

「信号無視の大人を真似て子供が横断歩道渡る→子供はねられて死亡」 直前に信号無視をした大人にも責任問える?」と題して、前回コラムを掲載した。
今回は、加害者である運転手が、その信号無視をした大人に対して、責任を問うことができるかどうかを扱う。
加害者の視点で考えると、目の前の信号が青だから渡ったわけで、子供が信号無視をしてこなければ、轢くことはなかったと考えることが出来なくもない。
そしてその子供の信号無視は、その直前に赤信号で渡った大人を真似たことが原因であり、その大人に対して責任を問えるかどうかというところである。
今回も、この問いに対して協力して頂いたのは木川雅博弁護士です。

信号無視をした大人に責任を問うことは出来ない!

そもそも、このケースにおいて、この大人に責任があるかどうかの基準はどのように考えるべきだろうか。

「過失があることが必要です。つまり子供を轢いた運転手が、その大人に対して損害賠償請求をする場合、大人に過失がなければなりません」(木川雅博弁護士)

「では信号無視をした大人に過失があるかというと、その子供の親戚だったり、子供の両親から預けられたりした人ではないので、子供を監護・監督する立場にないといえます。そうすると、子供が車にはねられないように気をつけるという注意義務が、発生しているとはいえません」

過失とは、ある事を予測することが可能な状態にも関わらず、その注意を怠ることを意味する。つまりこの信号無視をした大人には、自分が信号無視をしたことによって、子供がそれを真似をし、その結果轢かれて亡くなるということが予測出来なかったという意味になる。

子供に過失が認められ、損害賠償額は減額の可能性も

加害者である運転手としては、きちんと青信号であることを確認し、走行したわけであるが、この部分についてはどうなるのだろうか。

「運転手が、亡くなった子供の両親から損害賠償請求をされた場合、運転手は被害者である子供側の過失を主張して、賠償額の減額を求めることが考えられます(被害者側の過失による過失相殺といいます)」(木川雅博弁護士)

つまり、交通事故の原因は、信号無視をした子供にあるということである。

子供には、具体的に「どう注意するべきか」を教えることが重要

警視庁によると、子供の交通事故は「道路横断中、自宅付近、夕方の時間帯、自転車の事故、小学生の男子児童」が共通する特徴であると発表している。
夏のように気温が高くなり、夏休みも重なると、子供たちの行動範囲はぐっと広がることから、実際の統計データでも6月から7月にかけて最も交通事故が発生している。

もしもあなたが子供を持つ親であるならば、交通ルールを教える際には、「危ない」や「注意しなさい」など、抽象的な言葉ではなく、具体的に「なぜ危ないのか」「どう注意したらよいか」を教えることが重要である。
一度、自宅付近の交通事故が起こりそうな交差点等で、子どもと一緒にその場所まで行き、具体的に何に気をつけるべきかを教えてあげることをオススメしたい。

取材協力弁護士  木川雅博 事務所HP
東京弁護士会所属。星野法律事務所所属。平成23年に早稲田大学大学院法務研究科を修了した後、通信会社の法務・安全衛生部門に勤務。その後司法修習を経て、現事務所に入所。弁護士会では不動産法部や家族法部、相続遺言部などの会員として活発に活動。一般民事から企業法務、刑事事件など幅広く対応可能。弁護士を「身近な存在」として認識してもらえるように、日常生活における法律問題のコラムを多数執筆中。

ライター 大田タケル Twitter Blog